KOSMOST 編集部が読んだ“おすすめ本”ライブラリー。
微生物が愛らしくなる本を紹介します。
ライブラリー 020
『麹本: KOJI for LIFE』
なかじ(著), 農山漁村文化協会, 2020年3月25日
おうち時間に自家製麹づくりができる指南本
暮らしの中で、麹を育てる。
この本はそのための方法を書いた本です。
甘酒、塩麹、お味噌など、麹由来の発酵食品を自分で作ってみたことがある方は多いのではないでしょうか? では、「麹」そのものはどうでしょうか? 酒蔵や味噌蔵などプロの領域のようで、自家製麹を作るのはハードルが高く感じてしまいませんか。
“はっこうちゃん。”も、その一人でした。ウェブ検索をして、見よう見まねで自家製麹を作ってみたこともありますが、満足できる出来にはなりませんでした。そんな時に出会ったのが、この『麹本』です。
おかげで、麹づくりが包括的に理解できるようになりました。暮らしの道具を活用した麹づくりと麹の活用方法、理解すべき専門用語をわかりやすく写真と文章で解説しています。麹の手入れの仕方が丁寧に説明されているのも特徴で、初心者にも中級者にもおススメの一冊です。
著者のなかじさんは自然酒造りの酒蔵「寺田本家」で蔵人として日本酒づくり、麹づくりをしていました。今は、麹文化研究家として麹の学校を主宰しています。なかじさんの探求心の深さと実技と解説のわかりやすさに感銘を受け、“はっこうちゃん。”も麹の学校で学び続けています。
大切なことを網羅して、全63ページと超コンパクト。
麹づくりは、外硬内軟な蒸米、湿度温度の調整が重要です。湿度が乾きすぎても駄目ですし、温度が高くなりすぎても麹菌が育ちません。洗米から約3日間かけてつくる白米麹は、毎日観察と手入れをして、最終的に表面に麹菌の菌糸がモフモフと生えてきたら出来上がりです。
とはいえ、毎回毎回出来が異なるのが常。だからこそ、理論的に麹菌の活動を理解したり、自分の作っている麹と比較する参考写真が不可欠です。本書は時間軸や温度軸を使った麹菌の活動チャートや、数時間毎に変化する仕込み途中の麹写真があるので、迷った時にとても役に立つ指南本です。そして嬉しいのは軽くてコンパクト。持ち運びにも便利です。
麹を通して、世界とつながる。嬉しい日英表記
SNSなどで海外のグルメ情報を見ていると、“MISO”がしばしば登場していたり、3つ星シェフが発酵を語る際に“KOJI”というキーワードも見かけるようになりました。
麹が日本の食文化をつくってきた
もし麹が日本になかったら、現代の日本の食文化は全然違うものになっていたはずです。麹がなければ………今の和食が成立しません。……。実は和食文化の根底を支える基本調味料は、麹から生まれる発酵食品だからです。
先日、アメリカと日本をオンラインでつなげて味噌作りワークショップを行いましたが、アメリカ側参加者の麹に対する学びの姿勢が積極的でした。麹の役割を理解したうえで、自分たちの台所にある食材にどう応用したら良いかアイデアを探して質問する参加者もいて、麹文化がグローバルにも広がっていく可能性を感じました。
ワークショップ準備のために、本書の力を借りました。海外で麹文化を紹介する時にどの英単語を使うか?と悩んだ時に、日英ほぼ完全併記の本書は的確な英文説明があり、ちょっとしたニュアンスを伝えたい時のヒントになりました。
この『麹本』を通して、麹づくりに出会ったり、深めたりしてみませんか。
【微生物とよく暮らすKOSMOSTライブラリー:バックナンバー】
001:『見えない巨人―微生物』
002:『細菌ホテル』
003:『マイクロバイオームの世界――あなたの中と表面と周りにいる何兆もの微生物たち』
004:『微生物のサバイバル1・2』
005:『日本発酵紀行』
006:『腸と脳──体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか』
007:『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』
008:『ととのう発酵』ディスカバー・ジャパン2021年7月号
009:『もやしもん』
010:『最終結論「発酵食品」の奇跡』
011:『世界一やさしい!微生物図鑑』
012:『腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ』
013:『図解でよくわかる 土壌微生物のきほん: 土の中のしくみから、土づくり、家庭菜園での利用法まで』
014:『土と内臓―微生物がつくる世界』
015:『ノーマの発酵ガイド』
016:『生物と無生物のあいだ』
017:『発酵の技法 ─世界の発酵食品と発酵文化の探求』
018:『人体常在菌のはなし ── 美人は菌でつくられる』
019:『生物から見た世界』
020:『麹本: KOJI for LIFE』(現在の記事)