KOSMOSTが読んだ“おすすめ本”ライブラリー
微生物が愛らしくなる本を紹介します。
ライブラリー 002
『細菌ホテル』
キム・ソンファ, クォン・スジン 著, キム・リョンオン 絵, 金の星社, 2020年6月23日
ミクロの世界を覗いてみると
以前、普段は目にすることのない微生物の姿をぜひ子供たちに見てもらおう!と、顕微鏡をつかって乳酸菌を観察するイベントを企画したことがあります。
顕微鏡レンズを通してみる、はじめての微生物。これがヨーグルトに入っているのよー、とお母さんに言われて「ふーん」と興味深げな子もいました。が、もぞもぞウヨウヨしている球体の微生物の姿に驚いたのか、「ギャーっ」と叫んだり、「こわいよう」と泣いたりする子が多かったことを記憶しています。
この『細菌ホテル』はわたしたちの体に棲んでいる微生物たちからのメッセージが詰まった絵本です。
ぼくらは きみたちの 目にはみえない ちっちゃな ちっちゃな お客さん。今日も ぼくらの すてきなホテルは細菌たちで おおにぎわい
わたしたちのからだの中には、40兆個もの微生物が暮らしているので、まさに、からだは細菌たちの大ホテルとも言えます。
でも、その事実を知った主人公の女の子は、「うえ~!」と、びっくり仰天。怖がってしまいます。
わたしのからだで、細菌たちはいったい何をしてるの?
微生物はからだに棲んでいて、人間が消化できないかたいものを分解してエネルギーに変えてくれたり、栄養を運んだり、体の外から入りこもうとする病原菌から守ってくれたりする事もあるんだ……
女の子の細菌に対する誤解が、少しずつ、解けていくのを見た細菌くんが、苦笑いで一言。
だからさあ、ぼくたちの絵をツノのある悪魔みたいにかくのはやめてくれない?
菌といっしょに歩んでいこう
菌はあぶないもの、きたないものという固定概念が、子供たちだけでなく、私たち大人にも、しみついている世の中です。確かに、世の中には病原菌など、人間のからだに入ると危害を加える微生物がいます。身を守るために手を洗ったり、周囲を清潔にすることは、疾病予防にとても大切なことではあります。
でも一方では、たくさんの微生物が人間のからだで暮らしていて、わたしたちを守ってくれていること、そしてその存在を、もっと人間たちが知っていくことも、大事なのではないでしょうか。
そうすることで、わたしたちは、微生物と共に生きるものがたりを、もっともっと、楽しく歩んでいけるのかもしれません。
「こわいヤツもいれば、 こわくないヤツもいる それが~微生物~♪」
【微生物とよく暮らすKOSMOSTライブラリー:バックナンバー】
001:『見えない巨人―微生物』
002:『細菌ホテル』 (現在の記事)
003:『マイクロバイオームの世界――あなたの中と表面と周りにいる何兆もの微生物たち』
004:『微生物のサバイバル1・2』
005:『日本発酵紀行』
006:『腸と脳──体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか』
007:『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』
008:『ととのう発酵』ディスカバー・ジャパン2021年7月号
009:『もやしもん』
010:『最終結論「発酵食品」の奇跡』
011:『世界一やさしい!微生物図鑑』
012:『腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ』
013:『図解でよくわかる 土壌微生物のきほん: 土の中のしくみから、土づくり、家庭菜園での利用法まで』
014:『土と内臓―微生物がつくる世界』
015:『ノーマの発酵ガイド』
016:『生物と無生物のあいだ』
017:『発酵の技法 ─世界の発酵食品と発酵文化の探求』
018:『人体常在菌のはなし ── 美人は菌でつくられる』
019:『生物から見た世界』
020:『麹本: KOJI for LIFE』