KOSMOST 編集部が読んだ“おすすめ本”ライブラリー。
微生物が愛らしくなる本を紹介します。
ライブラリー 013
『図解でよくわかる 土壌微生物のきほん: 土の中のしくみから、土づくり、家庭菜園での利用法まで』
横山 和成 監修, 誠文堂新光社, 2015年7月7日
微生物は、私たちの周りの身近な場所にいます。
そう、あなたが今立っている足元の土の中にも・・・。
この本は<図解でよくわかる>シリーズの1冊で、土壌微生物についての「きほん」がイラストと写真の図解とともに科学的に解説されています。初めて「土壌微生物」を学ぶ方でもわかりやすいシンプルな構成です。
この本の監修である横山和成氏は、20年以上にわたり「土」の生物的な豊かさを研究してきた農学博士です。その横山氏がたどりついた答えが、
土の豊かさは、土の中に無数の存在する微生物の多様性とそれらの活性(有機物の分解)量の掛け算として数値化できる
ということでした。彼が、土壌微生物の遺伝子DNAを発酵させた像を顕微鏡で観察すると、暗黒の土壌粒子の中に、彼いわく、
まさに天空に輝く銀河にも見紛う生命のきらめき
を見たといいます。本書には、顕微鏡写真の掲載もあります。
この本は土壌微生物の概要から、農耕地との関係、これからの活用に至るまでが、章立てでわかりやすく解説されています。
土壌微生物とは何か~その役割と有機物との関係 (第1章~第7章)
土壌「微生物」である細菌や放射菌、菌類、藻類、原生動物などと、ミミズなどの土壌「動物」が合わさり、土壌は形成されています。そして土壌「動物」は動植物の遺体である有機物を細かく分解し、土壌微生物は有機物の無機化を手助けしています。
これが土壌微生物が生態ピラミッドの土台と言われる所以です。種類や役割、関わりがわかりやすく記載されており、概要と詳細を理解するのに役立ちます。
土と土壌微生物~農耕地と土壌微生物 (第8章~第10章)
土と土壌の違い作物生産における土壌の能力「地力」が発揮・向上されための土壌の物理的・化学的・生物的要因が相互に関連しているとき「生産物=野菜等」が良くできたと判断されます。この生物的要因の中に土壌微生物と土壌動物が存在しこちらも相互関係で成り立っています。
地球にとって最も価値がある動物と考えられているミミズについても丁寧に解説されています。農地や水田の微生物の働き方の違いや問題点もデータを元に記載されています。
土壌微生物活用のこれから (第11章)
1942年に実用化された世界初の有効抗生物質であるペニシリンも、土壌真菌(カビ)から作られました。「抗生物質」は現代医療に欠かせませんが、耐性菌の拡散が懸念されています。最近の研究で抗生物質耐性菌の抑制に土壌微生物が役立つ可能性があることがわかったそうです。
そのほか、バイオレメディエーションなどの微生物を利用した環境浄化技術やバイオプラスチックの生産などの最先端技術への活用にも今後期待されています。
普段は私たちの靴に踏みしめられている土の中で、
40億年途絶えることなく続いてきた究極の維持システム<生命>の営みが雄々しく脈々と行われる
事実に気づき、その基本構造を知ることは、これからの地球環境を学ぶ、最初の1歩になるのではないかと思います。
【微生物とよく暮らすKOSMOSTライブラリー:バックナンバー】
001:『見えない巨人―微生物』
002:『細菌ホテル』
003:『マイクロバイオームの世界――あなたの中と表面と周りにいる何兆もの微生物たち』
004:『微生物のサバイバル1・2』
005:『日本発酵紀行』
006:『腸と脳──体内の会話はいかにあなたの気分や選択や健康を左右するか』
007:『あなたの体は9割が細菌 微生物の生態系が崩れはじめた』
008:『ととのう発酵』ディスカバー・ジャパン2021年7月号
009:『もやしもん』
010:『最終結論「発酵食品」の奇跡』
011:『世界一やさしい!微生物図鑑』
012:『腸を鍛える―腸内細菌と腸内フローラ』
013:『図解でよくわかる 土壌微生物のきほん: 土の中のしくみから、土づくり、家庭菜園での利用法まで』 (現在の記事)
014:『土と内臓―微生物がつくる世界』
015:『ノーマの発酵ガイド』
016:『生物と無生物のあいだ』
017:『発酵の技法 ─世界の発酵食品と発酵文化の探求』
018:『人体常在菌のはなし ── 美人は菌でつくられる』
019:『生物から見た世界』
020:『麹本: KOJI for LIFE』