うつくしきこと
2021.09.30

藍が織りなす”発酵”いろいろ ~自然界のグラデーション~ 神田藍日記9月

藍・発酵・藍染・神田藍愛
(読了時間 : 5分)

「微生物」は、古くから暮らしに関わり深いパートナーです。実は、伝統的な染色である「藍」にも関係しています。その「藍」を、東京神田のビル街で育て、子供たちと染色するなど学び楽しむプロジェクトがはじまっています。今回は、プロジェクトを推進する一般社団法人「遊心」代表理事の峯岸由美子さんによるフォト日記の3回目。 今月は染めと、自然の色のお話です。

 

【2021年9月某日】

夏が過ぎ、見上げると青い空にいわし雲が浮かび、心地よい風が吹いています。神田藍は今、一番刈り、二番刈りを経て、風に揺られて美しくなびいています。

 

神田藍・生葉染め

7月には、会で初めての生葉染めをしました。藍葉をビニール袋に入れ、少しの塩と水でしばらく揉み込みます。葉が砕けて、できた緑色の液に布をいれて色を移していきます。

絹の場合は、秋空のような澄んだ水色になりますが、綿はほんのり薄緑色がつくかどうかでした。染めは布の素材、葉の量、還元剤の種類、染めの回数によって色味が変わってきます。

藍の色にはたくさんの呼び名があります。これは、いにしえより藍が人々の生活に身近であったことからついたと言われていますが、自然界の微妙な色合いを大切にする文化が日本人に合っているのだと思います。

藍・自然の色

 

自然界の色あいといえば、私は毎年味噌を作るのですが、仕込んでからの時間に応じて色が変わります。作りたては大豆と麹の色で淡い薄橙色(伝統色で鳥の子色)、天地返しのころには黄土色(黄朽葉色)、1年目には濃い目の黄土色(山吹茶色)、2年目にはグッと濃くなりこげ茶(黒茶色)と変化してきます。

濃くなるほどに、味噌の中で発酵が進み、微生物が生きてうま味が増しているのですね。この味噌の色と、匂いと触り心地で食べごろを見込んでいます。実際に2年目の色の濃い味噌はとてもまろやかでコクがあります。

味噌・発酵・微生物

 

同じように、自然の中を歩くと、状態に応じてのさまざまな色の変化に、目が留まります。たとえば、地面が固い、または柔らかい場所など、状態ごとにいろいろな感触と色あいがあることに気づきます。

柔らかい場所では地面がスポンジのようにフカフカしていて、よく見ると落ち葉がたくさん積もっています。表面の緑や黄色の葉、その下の薄茶の落ち葉、それをめくると落ち葉が細かく崩れて茶色が濃くなり、次第に黒っぽい腐葉土となります。木から落ちた葉が時間をかけて動植物や微生物で分解されて土に戻っていく過程で色が変わっていくのです。

同時に、落ちたての落ち葉の匂いから、香ばしい土の匂いへと変化していきます。発酵して栄養いっぱいの土の布団に、また次の代の種が落ちて…、というサイクルを繰り返しながら、地球という大地を作りあげているのですね。そして栄養たっぷりの土を通った雨水は、川をくだり海にも流れこみ、また循環していきます。

落ち葉・腐葉土・発酵・微生物

 

神田の街では8月に、 二番刈りを終えた神田藍を天日干しして乾燥葉にしました。こちらは藍色と緑と黒の間(藍墨茶色)に近い色。お茶をもっと香ばしくした薬草のような香りです。

本来の藍染めは藍葉を乾燥させたのち、水をかけて、葉の切り返しを繰り返し、温度管理をして発酵をうながし、約100日間といわれる気の遠くなるような時間をかけて蒅(すくも)を作ります。さらにその蒅に眠る還元菌を発酵させて染液をつくる「本藍建て」をして、藍染めを行います。

 

神田藍では、今年がプロジェクト初年度のため、まだ蒅(すくも)を作るほどの葉の量はとれません。そこで今回は還元剤の薬品をいれ、空気で酸化させる「化学建て」という方法をとりいれました。葉を煮出して、抽出液に還元剤をいれ、布を浸します。それらをパタパタと空気にふれさせて酸化させ、藍色をだしていく方法です。

染液から出したときの緑色が、空気に触れた後に徐々に青色に変化していく様は、木々の緑が空の青に溶け込んでいくようで、それは美しく感動します。その色を重ねていくことで、空色から、青、そして紺と変わっていき、味わいのある色になっていくのです。

神田藍・藍染め

 

今回、隣町の草木染工房の方や、型染工房の方にも手伝ってもらっています。神田藍プロジェクトでは、神田に限らず、共鳴するさまざまな方たちが混ざりあい、時間をかけてじっくりとつながりを「発酵」させて、美しい「色」へ変化していくようにしたいと思っています。そしていつか、神田で、微生物の力をたっぷり借りて本藍建てができることを心待ちにしています。

 

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【うつくしきこと:「ジャパンブルー・藍」シリーズ】

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