牧草をラップした牛たちの保存食
毎月23日は2(ニュウ)と3(サン)で乳酸菌の日。この記念日にちなんで毎月、乳酸菌にかかわるトピックスをとりあげています。さて、秋といえば収穫の季節。そこで今回は少し目先を変えて、牛たちの食べものである牧草の収穫にかかわる話題にふれてみたいと思います。
郊外をドライブしていて、収穫のすんだ畑にロール状の白い巨大な物体がいくつも転がっている奇妙な風景を見かけたことはないでしょうか?
これは飼料用の牧草やとうもろこしをビニールで巻き上げた「ロールサイレージ」と呼ばれるもの。牛たちの新鮮な飼料が少ない冬期に備えて保存するための工夫なのです。いわば、牧草の漬物といえるかも。そして漬物といえば欠かせない微生物が乳酸菌ですよね。そのとおりで、このサイレージづくりでも乳酸菌が大活躍しているのです。
乳酸菌発酵で保存性を高め、おいしさもアップ?
では、ロールサイレージのレシピを簡単に紹介しましょう。
まず刈り取った牧草をしばらく畑に放置して、天日でほどよく乾燥させます。次にこの牧草をロール状に仕立てて、専用の機械を使って特殊なビニールでぐるぐると巻き上げます。私たちがキッチンでラップを使って食品を保存するのと同じ要領ですね。これがあの畑の奇妙な物体の正体というわけです。
このように密閉して空気を遮断することによって悪玉菌の繁殖がおさえられ、やがて牧草についていた天然の乳酸菌が繁殖を始めます。乳酸菌発酵が進むにつれて牧草が酸性に変化し、保存性がさらに高まって長期保存が可能なサイレージが完成するのです。
以前は、サイレージづくりはタワー型の施設などで行われていましたが、最近では機械化が進み、このロールサイレージが主流になっているようです。また、良質なサイレージをつくるために、乳酸菌の製剤を添加することもあります。
さて、乳酸発酵となると、気になるのがその味わいですよね。牛たちにとってはたしておいしいのでしょうか。サイレージに関する文献をいろいろ調べてみたのですが、「食い込みよい」とか「嗜好性が向上する」といった表現が見受けられます。どうやら食欲を刺激して、牛たちの評判もよいようです。あえて料理名をつけるなら、「青草の塩抜きザワークラウト風」とでもいうのでしょうか。
参考文献・サイト
https://www.snowseed.co.jp/wp/wp-content/uploads/grass/grass_200103_04.pdf
【バックナンバー】
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こんなところにも乳酸菌!② 個性的な風味の秘密は「くさや菌」
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こんなところにも乳酸菌!⑥ そもそも「乳酸」とはなに?
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こんなところにも乳酸菌!⑩ ご当地自慢! ローカル乳酸菌飲料
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