おなかのこと
2021.09.26

年齢とともに変化する腸内フローラ・バランスをより良い状態にするには?【知菌・育菌しよう③】

年齢・変化・腸内フローラ

ウェルネスを豊かにしていくためには、私たち人間の見えないパートナーである微生物たちをもっとよく知ること(知菌)、上手に付きあっていくこと(育菌)がとても大切だとKOSMOSTは考えています。そこで、この「知菌・育菌しよう」シリーズでは、私たちの腸内にすむ細菌やその環境に着目して、ぜひ知っておきたい情報をお届けします。 

 

腸内フローラは年齢とともに変化する 

腸内フローラ(腸内細菌叢)は、玉菌・悪玉菌・日和見菌の繊細なバランスの繊細なバランスで成り立ち、私たちの健康を司っている存在です。前回のコラムで詳しく触れました。今日は、わたしたちの腸内フローラが、年齢とともに変化するのだというお話です。人間がこの世に赤ちゃんとして生まれてから、年老いて一生を終えるまで、そのバランスは大きく変わっていきます。 

 

赤ちゃんが生まれてから7日までの腸内フローラ 

まずは、生後7日目までの赤ちゃんにおける善玉菌の変化について、こちらのグラフを見てみましょう。 

赤ちゃん・腸内フローラ・善玉菌

 

実は、生まれる前、つまり母体にいるときには、赤ちゃんの腸内は無菌状態にあります。それが、出産と同時に、母体が持っている大腸菌などが、あっという間に赤ちゃんの腸内に入り込んできて、菌の数が増加します。 

生後3〜4日目ころからは、お母さんの母乳を飲むことによって、善玉菌の代表であるビフィズス菌がぐっと増えてきます。7日目あたりを見ると、ビフィズス菌の数が多くなっています。 

そして、やがて離乳食の頃になると、食べ物から菌を取りこむことの影響も加わって、徐々にその人固有の腸内フローラ・バランスが形成されていくのです。 

  

年齢による腸内フローラの変化 

次に、私たちが年齢を重ねていくことによる腸内フローラの変化を見てみましょう。グラフの縦軸は微生物の数、横軸が年齢の推移を表しています。

年齢・腸内フローラの変化

 

この推移から、腸内フローラのバランスは年齢を重ねていくにつれて変化することがわかります。たとえば、悪玉菌の代表であるウェルシュ菌などは、成年期の半ばごろから増加していく傾向がわかります。そして老年期に入ると、明らかにに善玉菌であるビフィズス菌は減少しています。 

このような腸内フローラのバランスの変化に影響を及ぼす大きな要因のひとつは、「加齢(老化)」です。これは誰しも避けられないことですが、それだけが要因ではありません。たとえば、高ストレス、運動不足、食事などで腸内フローラのバランスを乱すような生活をつづけていると、老年期を待たずして色々な影響が起こってくる可能性もあります。 

  

よりよい腸内フローラ・バランスのための、食事と腸内フローラの関係 

 腸内フローラに一番影響を及ぼすのが、毎日の食生活だと考えられています。それでは、腸内の善玉菌を増やすために、どのような食事を日々心がけるとよいのでしょうか? ここでは食事と腸内細菌の関係に注目してみましょう。 

 善玉菌の好む食べ物の代表格として、「野菜」や「果物」があげられます。善玉菌は、これらに含まれるオリゴ糖や食物繊維といった炭水化物を発酵させ、大腸の中でビタミンB群や乳酸などの有益な物質をつくってくれます。特に乳酸などの有機酸は、腸内を弱酸性にするため、有害物質などを速やかに排泄する蠕動(ぜんどう)運動も活発になります。 

一方、「肉」や「脂肪」などを食べすぎることは、悪玉菌が増える要因となります。高たんぱくで高脂質な食べ物を過剰に摂ってしまうと、本来は小腸で吸収されるはずのアミノ酸や胆汁酸が吸収されず、その先の大腸に流れ込みます。そして大腸にすむ悪玉菌がこれらを分解すると、発ガン性物質やコレステロール代謝物、アンモニアなどの有害物質をつくりだす原因にもなってしまうのです。 

 

腸内フローラの声に耳を傾けてみよう 

ところで、「腸内細菌学」という新しい学問を世界に先駆けて樹立した研究者が、日本人であることを知っていますか? その人こそ、東京大学名誉教授の故光岡知足氏です。 

光岡氏は、1953年に東京大学の大学院に進学した頃から腸内細菌の研究をはじめたパイオニアです。腸内細菌の大きな分け方を「善玉菌・悪玉菌・日和見菌」と名付けた人でもあります。腸内フローラ研究60年の集大成として『人の健康は腸内細菌で決まる! -善玉菌と悪玉菌を科学する―』(技術評論社)を執筆するなど、日本の腸内細菌学に大きな影響を与えました。 

光岡氏の研究を証明するように、最近の腸内細菌研究では、腸内フローラが生活習慣病や免疫、肥満や美肌などにも影響を及ぼしていることがわかってきました。わたしたちの健康やくらしは腸内フローラとともにあるといっても過言ではないかもしれません。 

みなさんも、自分の腸内フローラと対話する気持ちで、毎日の食事に意識的に善玉菌が喜ぶような食材をとりいれてみてはいかがですか。肉食に偏らないバランスのよいメニューを心がけてもよいですね。小さくてもよいので、出来ることから始めてみてはいかがでしょうか。きっと、よりよいウェルネスの一助となることでしょう。 

バランスのよい食事・腸内フローラ

 

【バックナンバー】  

知菌・育菌しよう① 腸は「第2の脳」~小腸・大腸の長さは?働きは?~ 
知菌・育菌しよう② 腸の中にお花畑!? 腸内フローラとウェルネスの関係 
知菌・育菌しよう③ 年齢とともに変化する腸内フローラ・バランスをより良い状態にするには?  (現在の記事)
知菌・育菌しよう④ 便は健康のバロメーター ~形・色・においで腸内フローラ・バランスをチェック
知菌・育菌しよう⑤ 軽視していませんか? 便秘のもたらす健康リスク

 

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KOSMOST 編集部

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KOSMOST編集部。2020年10月22日に創刊。おいしいこと、からだのこと、うつくしきこと、微生物のこと、おなかのこと、せかいのことをめぐる情報をつうじて、みなさまがウェルネス豊かなライフスタイルをおくれますように! -------- Q. ウェルネスのために心がけていることは? → A.いろいろな方々との発酵ダイアログから、新しいアイディアをうみだすこと! 🦠 KOSMOST編集部の記事一覧

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