乳酸菌たちがつくりだす有用な成分、「乳酸菌生産物質」についてシリーズでご紹介しているコラム。今回は、乳酸菌生産物質を安全かつ安定的につくるための技術、「共棲培養」についてお話します。その技術のお手本は、私たちのからだの中にありました。
16種35株の乳酸菌・ビフィズス菌を共棲培養
光英科学研究所では、乳酸菌生産物質を健康食品などの原料として供給するとともに、自社でサプリメントなども製品化しています。これらの乳酸菌生産物質を安全かつ安定的につくり出す技術が「共棲培養」です。乳酸菌生産物質の創始者である正垣一義氏が開発したその技術を受け継ぎ、さらに研究開発を重ね、共棲培養技術を独自に進化させてきました。
この共棲培養とは、異なる種類の細菌を共棲(共生)させて育てていく技術です。
乳酸菌生産物質が初めて開発された当時、8種類の乳酸菌を共棲培養していました。光英科学研究所では、その技術をさらに深め、人間の腸由来の乳酸菌やビフィズス菌など16種35株の菌を共棲させて乳酸菌生産物質をつくっています。
共棲培養は、有用な乳酸菌を選んで一緒に育てれば実現できるというものではありません。たとえば森林の生態系が生物たちの精緻な共生関係によって成り立っているように、乳酸菌たちにも複雑な相性関係があります。
光英科学研究所では、長い年月をかけて多様な乳酸菌を培養し、相性のよい2~4種類の菌同士の組み合わせを見出しました。それらのチームをさらに組み合わせ、16種35株という共棲培養を可能にしたのです。
腸内と同じような環境を再現した発酵タンク
しかし、たとえ実験室のシャーレの中で共棲培養に成功したとしても、それを工場で多く生産するためには、また別次元のブレイクスルーが必要になります。
そこで光英科学研究所がお手本にしたのが私たちの腸でした。
人の腸内には、100兆ともいわれる細菌たちが複雑な共棲状態のもと棲んでいます。腸内細菌たちは人間がとる食物繊維などを餌にし、さまざまな成分をつくり出します。そしてこれらの成分が、私たちのからだのメカニズムや健康に深く関わっていることが、最近の研究で次々と明らかになっています。
光英科学研究所では、独自に開発した発酵タンクで16種35株の乳酸菌・ビフィズス菌を培養し、温度を37度に保つなど、腸内と同じような環境のもと発酵させています。乳酸菌たちの餌として選んだのは大豆。有機栽培した国産大豆を液化して滅菌し、豆乳の状態にして培地として用いています。
乳酸菌生産物質の新しい可能性を求めて
食べものが人の腸内に留まる時間は20時間ほどといわれますが、光英科学研究所では120時間もかけて発酵を行っています。一次発酵、二次発酵とじっくりと発酵を促すことによって、多種類の生産物質をたくさんつくることができるのです。
光英科学研究所では1995年、埼玉県和光市に生産拠点を建設し、安全かつ安定的に乳酸菌生産物質を生産する体制を整えています。さらに翌1995年には中央研究所を開設。共棲培養技術をさらに深めるとともに、現在では大学の研究室などとも連携し、生産物質の成分の研究や人々の健康づくりへの応用など、乳酸菌生産物質の新たな可能性の追求に取り組んでいます。
参考文献・サイト
https://koei-science.com/speciality/co-culturing/
『不老腸寿』(村田公英著)幻冬舎
【バックナンバー】
乳酸菌生産物質とは① 細菌たちがつくりだす成分
乳酸菌生産物質とは② 乳酸菌たちをめぐる基本知識
乳酸菌生産物質とは③ ヨーグルトのはじまりと乳酸菌生産物質
乳酸菌生産物質とは④ 乳酸菌生産物質のキーパーソンたち
乳酸菌生産物質とは⑤ 乳酸菌の共棲培養を育んだ情熱
乳酸菌生産物質とは⑥ 人の腸をお手本に「共棲培養」を深める(現在の記事)
乳酸菌生産物質とは⑦ 腸内細菌学の巨人、光岡知足が唱える「バイオジェニックス」と乳酸菌生産物質
乳酸菌生産物質とは⑧ 350以上もの成分を含む乳酸菌生産物質、保湿もペットもアスリートにも?! 注目が集まる理由