自転車競技の世界女王である梶原悠未さん。その母であり、マネージャーとして食事の管理などに携わる梶原有里さんのインタビューの2回目です。悠未さんのからだのコンディションにあわせた食材や料理法の工夫、それから腸内細菌など微生物についてもお聞きしました。(2021年4月16日公開、2024年3月30日プロフィール更新)
> 自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートの食卓(1)
夕食は、コース料理のように工夫を凝らしています
KOSMOST(以下、K):今日は、お料理の工夫や栄養の管理などについてお聞きしていきたいと思っています。前回のお話では、1日の中ではやはり夕食がメインということでしたね。
梶原有里(以下、有里): そうですね。ゆっくりと食事を楽しめるように、コース料理みたいに何品も順番で出していきます。トレーニング後、30分以内に摂取できるようにするための私なりのテクニックですね。
というのも、私もマネージャーとして悠未の練習に直前まで付きそっているので、あまり手をかけてゆっくり食事の準備をする時間がないのです。練習から帰ってきて、悠未がシャワーなど浴びている間に最初の一品を用意し、それを食べている間に次の一品を料理するという感じです。
K:慌ただしそうですね。最初の前菜は何を出すのですか?
有里:サラダや温野菜です。生野菜は酵素をふんだんに含んでいるので、代謝を活性化させる働きがあります。量は、大きめのボウルに一杯という感じでしょうか。
次は小鉢を2、3品。小鉢は和食が多いですね。薄味でもおいしいですし、作り置きができるので便利です。野菜のキンピラなどをよくつくります。
K:そうなると、主菜はたんぱく質が中心となるのでしょうか?
有里:はい。お肉やお魚を、飽きないように食材のローテーションを考えてつくっています。それでも野菜やキノコなどをつけあわせるようにして、量はさほど多くはありません。お肉なら150gくらい。鶏、豚、牛のどれも使いますが、悠未は体質的に脂身が苦手なので、基本的に赤身が中心になります。
それから変化が出るように、メニューに汁物を加えています。野菜たっぷりで、味つけは和洋中いろいろ。ミネストローネなどもよくつくりますね。
K:おいしそうですね!なかでも、有里さんのいちばんの得意料理は何ですか?
有里:ひとつあげるなら、鶏の唐揚げかしら。でも、脂肪が気になるので基本的に揚げものは出しませんね。得意の唐揚げも、最近は3か月に1度つくるくらいのペースです。
自転車競技の練習は強度が高くハードなので、脂肪を貯めるというより、その脂肪をいかに効率よく筋肉に変えるかが重要です。そのため、毎日の体重管理にも気を配っています。
私も悠未につきあってダイエットをしていて、ここ伊豆で一緒に生活するようになってから、7kg体重が落ちました(笑)。
八百屋さんで目につく野菜はほとんど買っています
K:栄養面で気を配っていることはありますか?
有里:栄養のバランスは常に意識していますが、毎回の食事で細かく計算するようなことはしていません。キッチンではいつも戦争のような慌ただしさなので(笑)。
ただ、鉄分だけは不足しがちなので気をつけています。鉄分の多い野菜を選んだり、アサリなどの貝類やお肉のレバーを使った料理などをつくるようにしています。
K:野菜は1日何種類くらい食べるのですか?
有里:うーん、数えたことはありませんが、そうとうの種類になると思います。以前、自宅で料理している頃は行きつけの八百屋さんがあって、お店で目につく野菜はほとんど買っていましたらから。キノコも常に全種類揃えています。
K:食材は鮮度や旬などにこだわりますか?
有里:はい、気にしています。地元の八百屋さんで買っていた頃は、鮮度もよくて、お店の人から旬や料理法なども教えてもらっていました。でも、伊豆に来てしばらくは買物もスーパーマーケットで済ませていて、鮮度がちょっと気になりましたね。そこで最近は、地元の人に教えてもらった地場野菜を扱うお店に通うようになりました。
伊豆は、野菜ばかりでなく、魚や肉も新鮮でおいしく、料理にも新しい発見があります。行きつけの八百屋や魚屋を見つけることは、おいしい食材を上手に使うコツだと思いますね。
K:ふだんから悠未さんがたっぷり食べているという野菜やキノコは、食物繊維が豊富で、腸内にすむ微生物たちの大切な餌となります。食事を管理するうえで、腸内細菌や微生物のことを意識することはありますか?
有里:正直なところ、まだそこまでは意識していませんね。私は、理系が苦手なこともあるので……(笑)。これからは微生物の知識も学んでいきたいですね。
でも、悠未を支援してくださっている光英科学研究所の「乳酸菌生産物質」をサプリメントとして毎日とらせています。使い始めてから腸の調子もよく便の状態もよいようです。
K:そうなんですね。「乳酸菌生産物質」は、腸内細菌などがつくる成分を直接とる「バイオジェニックス」と呼ばれる分野のものですね。オリゴ糖はご存じですか? 食物繊維と同じように腸内細菌の餌となる成分なのですが。
有里:私自身は最近、コーヒーに入れる砂糖がわりにオリゴ糖を使っています。でも、それはどちらかというとダイエットが目的で(笑)。腸活になるとは思っていませんでした。これから私も微生物の知識を学んでいきたいと思っているので、KOSMOSTでそういう基本的な情報を発信してもらえると嬉しいですね。
K:ありがとうございます(笑)。ところで、いま便の話が出ましたが、悠未さんとはそういうからだのコンディションについて日頃からよく話をするのですか?
有里:それはもう毎日。私は、子どもたちが生まれたときから健康のバロメーターとして便の状態を気にしていて、「今日のうんち、どうだった?」など、日常的に話をしてきました。
そういう下地があるので、悠未とは、腸や便のことなどふだんからごくふつうに話題にしています。親子という関係のよいところでしょうね。便やからだのコンディションばかりでなく、食事の進み具合などもさりげなく観察していて、次の日の食事に反映させたりしています。
K:そういうお話を聞くと、「食」をはじめ、ふだんの暮らしの中で、人をケアしたり、思いやることの大切さを改めて感じます。それがまた、過酷な競技に挑む悠未さんを支えているのでしょうね。
(次回に続く)
【インタビュー連載】
自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートのライフスタイル(1)
自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートのライフスタイル(2)
自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートのライフスタイル(3)
自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートの食卓(1)
自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートの食卓(2)(現在の記事)
自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートの食卓(3)
梶原 悠未(かじはら ゆうみ) Yumi Kajihara
1997年4月10日生まれ
埼玉県和光市出身
身長155㎝
筑波大学大学院 在籍
[プロフィール]
高校進学と同時に競泳から自転車競技に転向。以来、天性の才能を発揮する。筑波大学へ進学後はエリートカテゴリーに上がり、全日本選手権5連覇、3種目の日本新記録保持、アジア選手権大会4連覇、ワールドカップ日本人史上初の4大会優勝。2020年世界選手権大会では日本人史上初の金メダルを獲得し、世界女王に輝く。2021年は東京五輪・世界選手権・チャンピオンズリーグに出場し、日本だけでなく世界に活動の場を広げ、欧州と日本を拠点にトレーニングを行っている。23年5月の全日本選手権では5種目優勝、6月アジア選手権では4冠を達成。日々、厳しいトレーニングを重ねている。
梶原悠未 公式サイト (yumi-kajihara.com)
梶原 有里(かじはらゆり) Yuri Kajihara
自転車競技で活躍中の梶原悠未選手の母であり、マネージャー。2児の母として子育てに取り組むとともに、長女、悠未さんのサポートを通じてスポーツ・マネジメントを学ぶ。現在は、悠未さんのマネージャーとして、練習のサポート、取材の対応、そして毎日の食事の管理に携わる。スポーツフードマイスター。アスリート栄養食インストラクター等の資格を取得。JADP認定メンタル心理上級カウンセラー。
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