自転車競技の世界女王である梶原悠未さん。その母であり、マネージャーとして食事の管理などに携わる梶原有里さんのインタビューの最終回です。今回は手料理ばかりでなく、外食のお話も。これからの願いとして最後に語る有里さんのひと言に、母としての想いが象徴されているように感じました。(2021年4月24日公開、2024年3月30日プロフィール更新)
> 自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートの食卓(1)
> 自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートの食卓(2)
「わぁー、おいしそう!」と、テンションがあがるように
KOSMOST(以下、K):前回に続いて、アスリートの食生活をサポートする有里さんの創意工夫などをお聞きしていきたいと思います。食材や調理などのほかに食事の管理で大事にしていることはありますか?
梶原有里(以下、有里):そうですね。私は、お料理の見映えにもこだわっています。
毎日厳しい練習が続くアスリートにとって、食事は数少ない息抜きタイムであり、生活の大事なアクセントなのですね。お料理が出てきた瞬間、「わぁー、おいしそう!」と、テンションがあがるように気を配っています。
K:具体的にはどんな工夫をしているのですか?
有里:いちばん気にするのは彩り、色のバランスですね。野菜などでも、赤や黄のパプリカを加えたり、なるべくたくさんの色がバランスよく交じるようにしています。知り合いの管理栄養士さんに聞いたのですが、色のバランスのよさは栄養のバランスにもつながるそうです。
デザートの果物なども食卓の彩りのポイントになります。最後に出すのではなく、早めに食卓に並べておくと彩りがよくなりますし、最後においしいフルーツが待っていることで食事のテンションも高まるのですね。
色あいのほかにも、食材の配置を工夫するだけで食欲を刺激することができます。たとえば、悠未の好物のおうどん。野菜をたっぷり使うと、野菜で麵が隠れてしまいます。そんなときは、麵だけを手前に寄せるようにすると、野菜も麵もバランスよく、おいしそうに見えると思います。
K:なるほど。そのあたりのテクニックは、わたしたちのふだんの食卓にも応用できそうですね。見映えということでは、テーブルに並べる器なども凝ったりしているのですか?
有里:じつは昨日も行ってきたのですが、伊豆に滞在するようになって、悠未と一緒に陶芸を始めたのです。最近、2人で使うお茶碗などに自作の器を使うようになりました。
K:陶芸は、親子どちらが才能ありそうですか?
有里:そうですね。悠未も上手ですが、才能は私の方が上かしら(笑)。悠未のよい気分転換にもなりますし、これからも続けていきたと思っています。
ときには外食をして、二人でゆっくり息抜きします
K:ところで、毎日3食きちっとお料理していて、ときにはサボりたくなることはありませんか?
有里:それはもちろん!(笑) そんなときは悠未に声をかけて、外食するようにしています。伊豆はおいしいお店がたくさんあるのですね。
K:どんなお店に行くのですか?
有里:最近よく行くのは鶏料理屋さん。焼き鳥のほか、鶏のお刺身ですとか、ふだん食べないものを頼みます。そのお店のコロッケがまたおいしいのです。二人でリラックスしてゆっくり話ができて貴重な時間です。
K:そんなときはふだん口にしない揚げものも解禁なのですね(笑)。
有里:ええ。ときにはメリハリをつけないと(笑)。悠未もオフの日には大好きなスイーツを食べたりもしています。そんなご褒美があるからこそ、過酷な練習とも向き合えるのです。
K:それも、私たちのふだんの食事に通じるポイントのひとつかもしれませんね。悠未さんはなんとおっしゃっていますか?
有里:彼女は、自分なりに栄養学なども勉強していて、私が言わなくても体調にあわせて自分で管理しています。そのあたりは安心して任せていますね。
でも、不思議なことに、悠未と私は、食べたいものやタイミングなど「食」の波長がなぜかいつもぴったりあうのですよね。外食に行きたいときなどの気分もすぐに察してくれるのです。
K:それも親子だからでしょうか(笑)。腸内細菌などが遺伝しているのかもしれませんね。
大ケガすることなく、幸せなアスリート人生を過ごしてほしい
K:悠未さんが出場する東京オリンピックもこの夏に予定されています。最後に今後の目標について聞かせてください。
有里:私たちがやるべきことは、オリンピックのあるなしに関わらず、変わることはありません。悠未に願っていることは、これまでもこれからもただひとつです。大きなケガをすることなく幸せなアスリート人生を過ごしてほしい。毎日そう思って食事を管理しています。
K:自転車競技は危険と隣りあわせのスポーツでもありますね。悠未さんはこれまで大ケガをしたことはあるのですか?
有里:激しい落車は何回かしていますが、幸い骨を折るような大ケガはありません。これも、日頃から食事に気を配っている恩恵かもしれませんね。
K:有里さんご自身のこれからも目標も聞かせてください。
有里:そうですね。将来は、私がこれまで培ってきた子育てやスポーツ・マネジメントの経験や知識を広く伝えて、たくさんの人の役に立つような仕事をしていきたいと考えています。
もちろん、その中心になるのは「食」にかかわること。これからはKOSMOST と一緒に、暮らしと微生物のことも学んでみたいと思っています。
K:ありがとうございます。KOSMOST は、これからも悠未さん、有里さんのお2人を応援していきます。ご活躍を期待しています!
(終)
【インタビュー連載】
自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートのライフスタイル(1)
自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートのライフスタイル(2)
自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートのライフスタイル(3)
自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートの食卓(1)
自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートの食卓(2)
自転車競技世界女王・梶原悠未 トップアスリートの食卓(3)(現在の記事)
梶原 悠未(かじはら ゆうみ) Yumi Kajihara
1997年4月10日生まれ
埼玉県和光市出身
身長155㎝
筑波大学大学院 在籍
[プロフィール]
高校進学と同時に競泳から自転車競技に転向。以来、天性の才能を発揮する。筑波大学へ進学後はエリートカテゴリーに上がり、全日本選手権5連覇、3種目の日本新記録保持、アジア選手権大会4連覇、ワールドカップ日本人史上初の4大会優勝。2020年世界選手権大会では日本人史上初の金メダルを獲得し、世界女王に輝く。2021年は東京五輪・世界選手権・チャンピオンズリーグに出場し、日本だけでなく世界に活動の場を広げ、欧州と日本を拠点にトレーニングを行っている。23年5月の全日本選手権では5種目優勝、6月アジア選手権では4冠を達成。日々、厳しいトレーニングを重ねている。
梶原悠未 公式サイト (yumi-kajihara.com)
梶原 有里(かじはらゆり) Yuri Kajihara
自転車競技で活躍中の梶原悠未選手の母であり、マネージャー。2児の母として子育てに取り組むとともに、長女、悠未さんのサポートを通じてスポーツ・マネジメントを学ぶ。現在は、悠未さんのマネージャーとして、練習のサポート、取材の対応、そして毎日の食事の管理に携わる。スポーツフードマイスター。アスリート栄養食インストラクター等の資格を取得。JADP認定メンタル心理上級カウンセラー。
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