ウェルネスを豊かにしていくためには、私たち人間の見えないパートナーである微生物たちをもっとよく知ること(知菌)、上手に付きあっていくこと(育菌)がとても大切だとKOSMOSTは考えています。そこで、この「知菌・育菌しよう」シリーズでは、私たちの腸内にすむ細菌やその環境に着目して、ぜひ知っておきたい情報をお届けします。
前回のコラムでは、自分の腸内フローラのバランスをチェックする簡単な方法として、「便の観察」を紹介しました。その際の着目点は、「形」「色」「臭い」でした。この腸内フローラの乱れによる不調の一つが便秘です。そこで今回は、ふだんから悩んでいる人も多い「便秘」をテーマにとりあげ、
便秘のときに腸内細菌バランスはどうなっているのか、またどのようにすれば便秘を改善できるのか、さらに便秘とも関連深いオナラのメカニズムについてお話します。
本当は恐い?! 便秘が引き起こす健康リスク
便秘のときに感じるお腹の不快感は嫌なものですよね。そのことが気になって集中力が散漫になり、仕事のパフォーマンスにも影響が出てしまうこともあるかもしれません。「便秘くらい平気」などとあなどってはいけません。実は、私たちの健康を脅かすさまざまな病気が、便秘によって引き起こされる恐れがあるのです。
そもそも便秘になると腸内ではどのようなことが起こるのでしょうか。
まず、便秘になると腸内に便が長くとどまるため、悪玉菌の発する有害物質がより吸収されやすくなります。また悪玉菌が増えると、腸の内容物を肛門側へ移動させる蠕動(ぜんどう)運動が滞りやすくなり、悪臭のするガスが発生しやすくなります。このような悪影響が、結果としてガンや生活習慣病の引き金となる可能性があるのです。
ちなみに、顔にあらわれる吹き出物も、腸にたまった有害物質が原因であことがあります。便秘によって引き起こされる不調は、健康だけでなく美容にまで影響を及ぼしているのですね。
便秘解消のポイントは「腸内細菌のバランス」
反対に、腸内細菌のバランスが善玉菌優勢となると、どのようなうれしいことが起こるのでしょうか。
まず、腸内の善玉菌は代謝物として有機酸を生産します。これにより、適度な刺激が腸の蠕動運動を活発にし、排便がスムーズにうながされるようになります。当然、便が長期間とどまることなく排泄されるため、有害物質の吸収もおさえられえます。
このように、善玉菌が優勢になると、いわゆる「自然なお通じ」が実現します。反対に悪玉菌優が勢になると、私たちの健康を脅かす有害物質がより腸内に留まりやすくなる悪循環に陥ってしまうわけです。
では、どのようにすれば、便秘をはじめとした悪玉菌優位の状態を解消できるのでしょうか。それは、より善玉菌優位の腸内環境をつくることです。このときに鍵となるのが、「日和見菌(ひよりみきん)」とよばれる中間菌です。
腸内細菌のバランスを良好に保つ鍵となる「日和見菌」
実は腸内に存在する菌の多くが「日和見菌」と呼ばれる中間菌であることをご存知でしたか? 「日和見主義」という言葉からも想像できるように、この日和見菌は形勢に有利な側に追従する特徴をもちます。つまり腸内環境が悪玉菌優位であれば悪玉菌側につき、善玉菌優位であれば善玉菌を味方するという、どっちつかずの存在といえるでしょう。
腸内では、善玉菌と悪玉菌と日和見菌が常にバランスをとりあっています。善玉菌の比率が多ければ腸の調子もよく、本来もつ免疫力を維持できます。そのためにも、いかにして日和見菌を善玉菌の味方にしておくかが重要です。
自分の腸内環境を確かめる方法については、前回のコラムでも紹介した通り、「便の観察」が有効です。もし、便秘や不健康な便がつづくならば、乳酸菌の摂取量を増やすなどして善玉菌を増やし、食生活や生活環境を見直してみてください。
「オナラ」はもうひとつのバロメーター
便秘やお腹の調子が優れないときにオナラの臭いがキツくなったという体験をしたことはありませんか。便と同様に、オナラも腸内環境のバロメーターとなります。
腸内にはガスが常に滞留しています。このガスは腸内細菌によってつくられるもので、オナラや便によって体外に放出されています。
オナラの成分のうち、臭いの元となるのは、インドール、アンモニア、スカトール、フェノールなどの成分とされています。これらの成分は、腸内の悪玉菌によってつくられます。つまり、悪玉菌が優勢な時ほど、オナラの臭いーが強くなるわけです。
オナラの臭いが気になったなら、それは「腸内環境を整えて!」という体からのサインです。便やオナラの状態をよくチェックし、健康状態を把握するバロメーターとしてぜひ活用していってください。
【バックナンバー】
知菌・育菌しよう① 腸は「第2の脳」~小腸・大腸の長さは?働きは?~
知菌・育菌しよう② 腸の中にお花畑!? 腸内フローラとウェルネスの関係
知菌・育菌しよう③ 年齢とともに変化する腸内フローラ・バランスをより良い状態にするには
知菌・育菌しよう④ 便は健康のバロメーター ~形・色・においで腸内フローラ・バランスをチェック
知菌・育菌しよう⑤ 軽視していませんか? 便秘のもたらす健康リスク (現在の記事)
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