微生物のこと
2021.09.07

地球をめぐる微生物の物語2 :炭素循環と微生物たち(読了時間 : 5分)

炭素循環・地球

微生物たちの存在を地球サイズの目線で考えるとき、必ず知っておかなければならない地球の仕組みが「炭素循環」です。太古の時代から、炭素は、大気や陸、海の間を気の遠くなるような時間をかけて循環し、地球上の生命たちは炭素循環とともに営まれています。「地球をめぐる微生物の物語」の2回目は、その物語の壮大なエピローグとして、この炭素循環をできるだけわかりやすく解説してみたいと思います。 

 

もしもこの地球に炭素がなかったら…… 

まずは炭素の話からしましょう。最近、“脱炭素”という言葉が独り歩きを始めて、炭素にはなにやら悪者のようなイメージがつきまとっているような気がします。けれども、そもそも炭素はこの地球にとって、私たち人間にとってかけがえのない元素なのです。 

地球が現在のように温暖な気候であるのも、大気中に混じる炭素の役割によるものです。もしも二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスが存在しなければ、地球表面の平均気温は−19℃になってしまうともいわれています。 

そればかりか、私たちのからだの筋肉や脂肪、骨などもほとんど炭素によってつくられています。人間のからだのうち、水分を除くと、体重の半分ほどは炭素によって占められます。地球的な目線で見るなら、私たちのからだも、炭素を循環させるための小さな小さなリンクのひとつに過ぎないのですね。  

 

炭素循環・森林・光合成

森林から始まる大気と陸との炭素循環 

陸での炭素循環は、森林をはじめとする植物からスタートします。植物は大気中にある二酸化炭素を取り込んで、光合成によって太陽エネルギーから有機物をつくります。 

この植物がつくった有機物から、昆虫や草食動物、さらには肉食動物へと食物連鎖が始まり、炭素も陸上の生態系の中で循環していきます。そして、呼吸という形で植物や動物から二酸化炭素が大気へと放出されます。 

さらに生命を終えた植物や動物は有機物となって土壌に蓄積し、微生物によって分解され、土壌からも二酸化炭素が放出されます。また、分解されずに残った有機物は長い時間をかけて土壌炭素として貯蓄されます。人間が利用している石化燃料も、こうして土の中に貯蓄された土壌炭素の一部というわけです。 

 

海の中を循環させる2つのポンプ 

大気と海の間でも炭素は循環しています。その循環は“ポンプ”にたとえられ、大きく2つのポンプがあるといわれます。 

その1つは溶解ポンプと呼ばれ、炭素が物理的・化学的に海に溶け込むものです。溶け込んだ炭素はゆっくりと海の中を循環し、再び大気へと放出されます。 

もう1つのポンプは、陸上の生態系の循環と基本的に同じです。海に漂う植物プランクトンの光合成によって取り込まれた二酸化炭素が有機物となって海の生態系の中で循環していきます。これは生物ポンプと呼ばれています。 

炭素循環・大気と海の間・ポンプ

 

なぜ、地球温暖化が始まったのか? 

このように炭素は、地球上を気の遠くなるような年月をかけて脈々と循環しています。IPCC(国連気候変動に関する政府間パネル)の第5時評価報告書によると、大気中に含まれる二酸化炭素は年間で161.6億トンといわれ、そのうちの約6割が陸上の森林、約4割が海によって吸収されます。 

一方、大気にある二酸化炭素のうち、約57%が土壌から、約38%が海から放出されています。さて、そこで問題となるは、残りの約5%はいったいどこから排出されているかということです。 

答えは言うまでもありません。そのほとんどが太古の時代にはなかった人間活動によるものです。18世紀半ばの産業革命以降、人間が石炭や石油の石化燃料を燃やして使うようになり、大量の二酸化炭素が大気中に排出されるようになったのです。 

冒頭でもふれたとおり、二酸化炭素は温室効果ガスとも呼ばれ、地球を温暖に保つ役割を担っています。その二酸化炭素が人間の活動によって増えすぎ、自然の状態よりも気温が上昇するというのが地球温暖化の基本的な仕組みです。 

地球温暖化については、人間活動の影響ばかりでなく、自然現象によるものだという説もあり、専門家の間でもさまざまな議論があるようです。 

それはさておき、ぜひ知ってほしいのは、地球をめぐる「炭素循環」という自然のメカニズムであり、そこに地球上のあらゆる生命がつながっているということ。その生命のリングの中で大切な役割を担っているのが、私たちの目に見えない微生物たちなのです。次回からは土壌や海の中で活躍する微生物たちの暮らしぶりをクローズアップしてみたいと思います。 

 

【地球をめぐる微生物の物語シリーズ】 

1: 雲にのって空を旅する微生物たち 

2:炭素循環と微生物たち 

 

 

> 関連コラム 藍が織りなす”発酵”いろいろ ~人と自然と~ 神田藍日記7月 

 

 

Reference:以下の情報を参考に作成しています 

https://www.env.go.jp/earth/ipcc/5th/pdf/ar5_wg1_overview_presentation.pdf 

https://www.rd.ntt/se/media/article/0001.html 

https://www.data.jma.go.jp/gmd/kaiyou/db/mar_env/knowledge/global_co2_flux/carbon_cycle.html 

https://www.jccca.org/global-warming/knowleadge01 

https://www.kodomonokagaku.com/read/hatena/5172/ 

『正しく知る地球温暖化』(赤祖父駿一著, 誠文堂新光社) 

 

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片倉 さとし

コピーライターの本業の傍ら、ときどき“いきものライター”として魚をはじめ生物系の記事や書籍を書いています。免疫力を高めると言い訳して、週末はサーファーとして毎週海へ。KOSMOSTにかかわるようになって微生物の本を読みあさり、最近、毎朝スムージーを飲むようになりました。 -------- Q. 「微生物とともに生きるライフスタイル」で大切にしていることは? → A. 酒場で迷ったときは、蒸留酒よりも醸造酒を選ぶこと。 Q. ウェルネスのために心がけていることは? → A. サーフィン。あまり熱心ではないヨガ。

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