うつくしきこと
2020.10.15

「美肌菌」に意識を向けて、ナチュラルな肌のお手入れを

美肌菌をナチュラルにケア

最近、コスメの記事でよく見かける言葉が「美肌菌」。あの細菌が私たちの皮膚にどのように関係しているの? まして美肌づくりに役立つなんて……。とても気になりますよね。今回は、皮膚にすむたくさんの微生物に注目したナチュラルな美容法のお話です。

私たちの顔の皮膚には約100万個もの微生物が

私たちの腸の中にはたくさんの細菌がすみ、健康に欠かせない役割を果たしています。それは腸ばかりではありません。人のからだの外部と接しているあらゆる部分に棲んでいるのです。

なかでも全身を覆う皮膚は、その面積はおよそ畳1枚分にもなり、汗や脂を分泌したり老廃物を排出したり、健康維持に関与したり 、人体で最大の臓器とも呼ばれています。そこにすむ細菌の数も腸に次いで多く、私たちの顔には1平方センチあたり約100万個(!)もの微生物がすんでいるともいわれます。

そう、私たちの顔の表面ではびっしりと細菌がひしめき、からだの最前線で肌を守ってくれているのです。

私たちの身のまわりでは抗菌・除菌がブームの昨今、この事実を知って驚く人も多いと思います。けれども、これらの細菌は、細胞とともに私たちの皮膚の一部といってもよい存在。肌荒れや皮膚炎を防ぎ、美肌を保つ大切な役割を果たしているのです。

「美肌菌」って、いったいどんな役割を?

人の皮膚からは約1,000種もの微生物が見つかるといわれます。その中から、美肌に深く関わる3つの細菌を紹介しましょう。

まず1つめは、「美肌菌」とも呼ばれている「表皮ブドウ球菌」。皮膚のいちばん外側の角質の隙間などにすみ、汗や皮脂を食べてグリセリンや脂肪酸をつくり出しています。

このグリセリンには、肌にうるおいを与えバリア機能を保つ力があります。また、脂肪酸は、肌を弱酸性に保つなど、肌荒れや皮膚炎を引き起こす悪い菌が増えるのを抑えます。つまり、肌を守る大切な役割を担っているのですね。

2つめが「黄色ブドウ球菌」です。皮膚の表面や毛穴などにいます。同じ仲間の表皮ブドウ球菌と比べて病原性が高く、皮膚がアルカリ性に傾くと増殖し、肌荒れや皮膚炎の原因となります。

表皮ブドウ球菌を「善玉菌」と呼ぶなら、この黄色ブドウ球菌は「悪玉菌」ともいえる存在でしょう。

そして、3つめは、「アクネ桿菌」です。酸素が苦手なために毛穴など皮膚の深部にひそんでいます。毛穴が詰まって酸素不足となるとアクネ桿菌が増殖しニキビの原因となりますが、じつは美肌に関わるよい働きもあります。表皮ブドウ球菌と同じように肌を弱酸性に保ち、悪い菌が増えるのを防ぎます。

洗顔のコツ

ふだんのナチュラルな生活で美肌づくり

いま代表的な3つの菌の役割を紹介したとおり、美肌を保つためには、皮膚にすむ細菌たちがバランスよく快適に働ける環境を常日頃から整えておくことがポイントになります。

うつくしい肌というと、高価な化粧品や最新の科学などについつい目がいきがちですが、じつは身近な微生物たちとともに生きるという生活がとても重要です。

なかでも大切となるのが、「美肌菌」といわれる表皮ブドウ球菌を減らさないこと。

この表皮ブドウ球菌は、皮膚の外側の角質層にすんでいます。ですから、無理に角質を落とすようなことは「美肌菌」にとってマイナスになってしまいます。肌を弱酸性に保つことがポイントです。

たとえば、頻繁な洗顔、洗浄力の強い洗顔料で肌がアルカリ性になると「美肌菌」の活動は低下します。長時間の入浴で肌がふやけると「美肌菌」が流れてしまいます。逆に、汗や皮脂は表皮ブドウ球菌の餌になるので、スポーツなど汗を流すことはプラスとなります。

また、「美肌菌」は乾燥も苦手です。空気が乾きがちのこれからの季節はとくに気を配りたいものですね。私たちの皮膚にすむ小さな小さな友人たちに意識を向けて、ナチュラルな美肌づくりをめざしてみてはいかがですか?

 

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KOSMOST 編集部

KOSMOST 編集部

KOSMOST編集部。2020年10月22日に創刊。おいしいこと、からだのこと、うつくしきこと、微生物のこと、おなかのこと、せかいのことをめぐる情報をつうじて、みなさまがウェルネス豊かなライフスタイルをおくれますように! -------- Q. ウェルネスのために心がけていることは? → A.いろいろな方々との発酵ダイアログから、新しいアイディアをうみだすこと! 🦠 KOSMOST編集部の記事一覧

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