皆さん、「タバスコ」と聞くとどんな料理を思い浮かべますか? 昭和世代の石黒アツシさんは、スパゲッティナポリタンなのだそうです。「旅・写真・ごはん」をテーマに、世界中を旅する「旅行家・写真家・食事家」が発酵食品を語るコラム。今回はそんなタバスコをめぐるホットな話題です。
最初にタバスコをかけた料理の思い出
スパゲッティナポリタンといえば、昭和の喫茶店グルメの定番でした。軟らかめに茹でたスパゲッティを、油を熱したフライパンで、ピーマン、玉ねぎ、ソーセージといっしょに炒めて、トマトケチャップをかけ混ぜると、ケチャップが焼ける香りが広がって、口にすればトマトの酸味を感じます。そこにいつもあったのがタバスコ、ペッパーソースでした。スパゲッティナポリタンが最初のタバスコ体験だったという昭和世代の方、多いんじゃないでしょうか。
今ではどこのスーパーマーケットでもタバスコは手に入りますから、当たり前の調味料になったのだと思います。それにしても最初に口にしたときはその辛さに驚かされました。今回はまず、辛さの単位「スコヴィル値」をご紹介したいと思います。
唐辛子の辛さを測るスコヴィル値
スコヴィル値はカプサイシン濃度から求める辛さの指標で、当たり前ですが唐辛子などの辛い物の程度を示すために使われます。数字が大きいほど辛いということになります。
さて、現在日本で手に入るタバスコは上の写真の6種類。それらを辛い順に並べてみました。左から右へ、どんどん辛くなります。下がそれぞれの名称とスコヴィル値です。
ハラペーニョソース| 600~1,200 マイルドな緑のハラペーニョ種の唐辛子
ガーリックソース|1,200~1,800 こちらもマイルドでガーリックテイストのもの
チポートレイソース|1,500~2,500 スモーキーな香りのBBQソース風
オリジナルソース |2,500~5,000日本でいちばんお馴染みのもの
ハバネロソース|5,000~8,000 ハバネロ種にフルーツを加えたもの
スコーピオンソース|23,000~33,000 スコーピオン種をつかったもの
つまり、使用する唐辛子の辛さがタバスコのスコヴィル値を決めているんですね。それにしても一っ番一般的なオリジナルソースでも十分辛いと思いますが、スコーピオンソースの数値はすごいですよね。実際に口にしてみると少ししびれるような感覚になりました。
酢酸発酵で作られる160年以上変わらない製造法
それぞれのタバスコの実際の色は上の写真の通りです。見ているだけでも辛さが伝わってきそうです。粘度にも違いがあるようです。
オリジナルのタバスコが初めて作られたのは1868年のことで、以来そのレシピはほとんど変わっていないそうです。タバスコの全製品が作られているのは、アメリカのニューオリンズ近郊にあるエイブリー島。そこで唐辛子が栽培され、使用される岩塩もこの土地で採れます。
タバスコの製造に欠かせないのが「酢酸発酵」です。唐辛子に塩を混ぜて熟成させたのちに、穀物酢を加えて1か月ほどたつとタバスコは完成します。酢酸菌がアルコールから酢酸を作るんですね。味は辛いですが、確かに酸っぱさを感じます。
さて、酢酸菌による酢酸発酵は、少し前に日本でも流行した、フィリピン発祥のナタデココや、カスピ海ヨーグルトなどにも使われています。もちろん、日本のお酢も、酢酸発酵で作られます。
参考文献・サイト
カプサイシンに関する詳細情報:農林水産省 (maff.go.jp)
ソースの誕生 | TABASCO® Brand Legendary Pepper Sauce
(All photos by Atsushi Ishiguro)