「旅・写真・ごはん」をテーマに、世界中を旅する「旅行家・写真家・食事家」、石黒アツシさんが綴る今回のコラムの舞台はジョージア。2015年までグルジアと呼ばれていた国です。ここで8000年前からつくられてきたものがワイン。昔ながらの製法でつくるワイナリーを訪れたお話です。独特な琥珀色の「アンバーワイン」の製法とは?
カスピ海と黒海の間に位置するジョージアは2015年までグルジアと呼ばれていました。ソビエト連邦に加盟し、ソ連構成共和国の一つでしたが、1989年ソ連崩壊後の1991年には独立宣言を発して、社会主義から共和制国家になりました。「グルジア」はロシア語の呼び名だったんです。
さて、ジョージアはアルメニア、アゼルバイジャンと共にコーカサス地方と呼ばれる地域にあります。コーカサス地方の南はトルコ・イラン・イラクと国境を接し、北はコーカサス山脈がロシアとの国境です。地図で見てみると、この辺りが乾燥した砂漠でもなく緑が濃く、緯度も高くなくて寒冷でもありません。気候帯は温暖湿潤気候ですから、ワインづくりにも適した豊かな土地なのだということがわかります。
今回はジョージアが起源と言われるワインを、次回以降には小麦を使った料理と、独特な保存食品をご紹介したいと思います。
8000年前にジョージアで始まったワイン醸造
フランス、イタリア、カリフォリニアに南米と、ワインは世界各国で作られています。そのワインが生まれたのがコーカサスのジョージア。8000年前から続いているというから驚きです。
気候は寒いのかと想像していたのですが、4月初めの頃は日本よりちょっと寒いかなと言った程度でした。コーカサス山脈が北にあることもあって、寒気はあまり入り込まないようです。
国内あちこちの地方でワインが作られていますが、この旅では昔ながらの製法を続けるワイナリーが多い東部のカヘティ地方へ出かけました。
地中に埋めたクヴェヴリで発酵から熟成まで
ここが現在でも現役、古くからの製法を守っている石造りのワイナリーの内部です。丸い穴がありますが、この穴が冒頭の写真にある陶器の壺「クヴェヴリ」の口にあたる部分。そこから下の部分は地中に埋められています。埋めることによって一定の温度に保つことができます。
この部屋で、収穫したぶどうを桶に入れて潰し、最初は大きなクヴェヴリにいれて発酵させ、その後に小さなクヴェヴリに移して熟成させます。大きなものだと、掃除をするのにはしごを掛けて中に入るほどです。
アンバーワインと呼ばれる琥珀色の白ワイン
ワイナリーではテイスティングを楽しめます。いくつか試飲してみるととってもナチュラルで、「体になじむ」といった印象でした。自然の酵母で発酵させて、添加物なども加えずに作られているからなのだと思われます。
ジョージアの白ワインは赤ワインのように皮をつけたままで作るので、その色はきれいな琥珀色です。「アンバーワイン」とよばれています。皮からの渋みというかタンニンも感じられるので、これは肉料理にも合いそう。また、ポリフェノールも多いので健康にもいいそうです。
蒸留酒チャチャはウォッカかブランデー
果汁を絞った後に残ったブドウで作るのが「チャチャ」という蒸留酒。「ワインウォッカ」とか「グルジアウォッカ」と呼ばれることもあるそうですが、ウォッカはじゃがいもで作るもののみを指しますから、もちろんウォッカではありません。ブドウから作るのでブランデーの一種と言えるかもしれません。上の写真がチャチャを蒸留するための大きなやかんの様な道具で、下から火を焚いて使います。
首都のグルジアにあるスーパーマーケットに行くと、ワインの試飲を行っていました。真ん中にあるのがチャチャです。チャチャのアルコール度数は40度以上。ものによって70℃のものもあるとか。要注意ですね。
実際にジョージアのワインを飲むまでは、あまり洗練されていない葡萄酒といったものかと誤解をしていましたが、実際にはふくよかでナチュラルな印象でした。特にアンバーワインは独特なので、機会があれば飲んでみてください。
[All photos by Atsushi Ishiguro]