「旅・写真・ごはん」をテーマに、世界中を旅する「旅行家・写真家・食事家」、石黒アツシさんが綴るコラム。青森のリンゴ酢から始まった発酵食品の旅は、国境を超えてトルコへ、オーストリアへ。石黒ワールド全開のおいしく楽しい話をご堪能ください。
リンゴの淡いピンクの花びら
青森と言えばリンゴ。ずいぶん前のことになりますが、5月に旅したころはリンゴの花の季節で、果樹園にはかわいい淡いピンクの花がよく咲いていました。
まだ雪が残る岩木山を望んだこの土地の新緑と花々の風景は、長く厳しい雪の季節を過ぎて来たからこその美しさのように思います。
さて、リンゴと言えば「リンゴ酢」。リンゴを使っているんだろうなとはわかるものの、いったいどんな酢なんでしょう。
お酒を造ってから酢酸に変化して熟成
酢は「発酵調味料」のひとつです。リンゴ酢なら、まずはリンゴに含まれる糖を皮についている天然の酵母で自然にアルコールに発酵させます。ここまでだとリンゴのお酒「シードル」です。ところが、リンゴには「酢酸菌」もくっついているので、そのままにしておくと今度は酢に変化して、アルコールの成分がなくなります。そこから熟成して完成です。3年間も熟成するものもあるそうです。
私が普段使っているリンゴ酢はスーパーマーケットでも売られていて手に入りやすいものです。材料を見てみると、有機リンゴのみでした。
トルコでも家庭で楽しまれているリンゴ酢
さて、広大な領土を収めて食にも贅の限りを尽くしたオスマントルコ時代から、その食文化を今へと受け継いでいるトルコ。ここでもビネガーは料理に欠かせない調味料です。食卓にビネガーの瓶を置いて料理に卓上でかけるということも多いそうです。例えば、サラダにはドレッシングを事前に作っておくのではなく、ビネガーを直接かけるといった具合です。
トルコのビネガーメーカー「ケマルキュレル」のリンゴ酢とブドウ酢は、日本でも販売されていて、スーパーでも手に入ります。
日本のものも、トルコのものも、リンゴの香りがする酢ということで基本的には同じです。使っているリンゴの特徴が香りに出るようなので、好きなものを探してみるのも楽しいと思います。
ビネガーの種類が多様なオーストリア
一方、東ヨーロッパを中心に統治を広げたのはハプスブルク帝国。そのおひざ元であるオーストリアのウィーンでは、フレーバー・ビネガーのお店を訪ねました。町の中心にある「ナッシュマルクト」という常設の市場には、生鮮食品から加工品、日用品などをあつかう店が出ていて、見ているだけでも楽しめます。その一角にビネガー専門店がありました。
事前にボトルに詰められたものもありますが、棚に並ぶ木樽や大きなガラス製の容器から量り売りしてもらって買うこともできます。ブドウのワインビネガーといった日本でもよく見るものから、ブルーベリーやブラックベリー、アスパラガス、レモングラスといった様々なフレーバーのビネガーがあるとは驚きです。
牛乳を使ったビネガードリンク
最近、リンゴ酢を健康のために飲むという人も増えているようで、すぐに飲めるような商品もお店に並んでいます。ボトルで買って料理にも使うなら、こんな飲み方もおススメです。
牛乳150mlに氷を入れて、りんご酢大さじ2を加えて混ぜます。ちょっととろみが出て、薄い飲むヨーグルトと言った感じになります。酢はそのままたくさん飲むと胃があれてしまうので、5倍以上に薄めるのがいいそう。牛乳ならなおさら優しいと思います。
[All photos by Atsushi Ishiguro]