サンゴ礁は海洋の生物多様性にとって欠かせない。世界の漁業の年間数十億ドルもの海の幸は、サンゴ礁の恩恵によるものとされている。しかし、地球温暖化やそれに伴う病原菌の活発化が、サンゴの白化・壊死を引き起こしており、2022年今日の国際問題となっている。
大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科、琉球大学熱帯生物圏研究センター、東京大学 大気海洋研究所の研究者による研究グループは、サンゴの主な病原菌とされている悪玉菌の生育を抑えることが期待される善玉菌を、特異的に検出することに成功した。
これによって、サンゴの白化を抑える細菌をプロバイオティクスとしてサンゴ保護のために利用する研究の進展が期待されている。大阪府立大学大学院から北村瑠璃子さん(2020 年度博士前期課程修了)、三浦夏子助教、片岡道彦教授、琉球大学熱帯生物圏研究センターから伊藤通浩助教、山城秀之教授、そして、東京大学大気海洋研究所から高木俊幸助教たちが共同研究した成果だ。
近年の研究で、サンゴの白化を抑える微生物は「Ruegeria(ルエジェリア)」という善玉菌であることがわかってきた。この善玉菌は今までサンゴを破壊しなければ得ることができなかったが、今回の研究によってサンゴ礁周辺の海水からの取得が可能になり、サンゴを傷つけることなく簡単に採取できるようになった。
この採取手法は、絶滅に瀕したサンゴの保護にあたっての基礎技術となると考えられている。Ruegeria(ルエジェリア)をプロバイオティクスとして活用することで、サンゴ礁の白化が抑制されることが見込まれる。こうした結果、サンゴ礁がもたらす海洋環境全体の生物多様性がさらに促され、将来的には持続的な開発に向けて海洋資源を保全するSDGsの達成に貢献するものと期待が寄せられている。
参考文献・サイト
日本の研究.com掲載のプレスリリースより編纂
https://research-er.jp/articles/view/104435
[ ここに注目 by KOSMOST編集部 ]
善玉菌や悪玉菌といった微生物は、わたしたちの腸内だけでなく、サンゴの生息する海などの自然界にも存在しています。微生物の働きが環境に作用しているという点では、サンゴも人間と共通しているのですね。
微生物と地球の関係については、KOSMOSTでもテーマにしています。地球環境問題に目に見えない微生物の存在が大きく影響していることも、覚えておきたいことのひとつです。
地球をめぐる微生物の物語1: 雲にのって空を旅する微生物たち
地球をめぐる微生物の物語2 :炭素循環と微生物たち
今回の大阪府立大学大学院・琉球大学・東京大学の研究の成果が、将来的に、サンゴの白化抑制やサンゴ礁の環境改善につながるとすると、地球の環境保全という観点からも画期的なことではないでしょうか。