「旅・写真・ごはん」をテーマに、世界中を旅する「旅行家・写真家・食事家」、石黒アツシさんが綴る今回のコラムの舞台は、インド洋の真珠と呼ばれる熱帯の島、スリランカ。古都の市場を歩いていて見つけた発酵食品、水牛のミルクからつくる「カード」のお話です。
スリランカでは29種類ものバナナが店先に
スリランカの古都キャンディに出かけたのは8月のこと。目的は、ペラヘラ祭りを観たかったからです。ペラヘラ祭りとは、仏教の寺院に保存されている仏陀の歯を飾った祠を乗せた象が街を練り歩くというもの。でももちろん、いつもの旅のように街の市場に出かけてみました。色とりどりの果物や、新鮮な野菜が山積みで、ここが豊かな土地なのだということが見るだけでわかります。
入り口近くにはバナナ専門の店がありました。聞いてみるとスリランカには29種類のバナナがあるそうで、確かに形が異なるものがぶら下がっていて、素人にも違う種類だと分かります。いくつか食べさせてもらったのですが、甘さ、ねっとり感、バナナの独特なえぐみなど、それぞれに特徴がありました。
これは料理に使うバナナの花。日本ではなかなかお目にかかることもありませんが、表面の皮をはいだ内側を炒めたり、魚などと煮こんだりして料理するそうで、現地ではよく食べられているそうです。後日炒めたものをいただいてみると、シャキシャキとした食感に特徴があって楽しく、味のほうは特にくせがなく食べやすく、アーティチョークや筍に似ているようにも感じられましたが、やっぱりこれは独特な食材です。
水牛のミルクからつくる発酵食品
米屋を覗いてみると、白いものからちょっと黄色みを帯びたもの、うっすらピンクのものなどバラエティ豊富です。一般家庭では赤米を食べることが多いそうです。米は茹でてからざるに上げ、食感はパラパラ、サラサラしています。これがスパイスの効いた料理によく合います。
さらに市場を奥へと進むと、こんなパッケージを見つけました。「Pure Curd」(ピュア・カード)と書かれています。そして、描かれているイラストは水牛です。カードは水牛の乳から作った発酵食品で、スリランカでは「Mee Kiri」(ミー・キリ)とも呼ばれます。日本では目にしないカードですが、スリランカではヨーグルトよりも一般的で、どこの地域でもよく食べられているそうです。
宿泊していたホテルでは毎朝、朝食のデザートに登場していました。ヨーグルトよりもしっかりと重みがあって、水牛ならではコクが感じられます。添えられたソースは「トリークル」と呼ばれ、砂糖の精製の途中過程のもので、メイプル・シロップのようにサラッとしていながらも、蜂蜜の様な濃厚さがあります。それをかけたカードはちょっとリッチな味わいになって、コーヒーにもよく合いました。
スリランカを旅したら、ぜひいろいろな種類のバナナとカードを試してみてください。
[All photos by Atsushi Ishiguro]