鰹節というと、日本独自の食文化と思っていましたけど、どうもそうではないらしい……。「旅・写真・ごはん」をテーマに、世界中を旅する「旅行家・写真家・食事家」、石黒アツシさんが旅先で出会った発酵食品を語るコラム。今回はスリランカのライス&カレーと、そのおいしさの秘訣、「モルディブ・フィッシュ」についてです。
スリランカの「ライス&カレー」
カレーが国民的な日常食という国は、ネパール、パキスタン、バングラディシュ、インド、そしてネパールと、東経80度近辺に南北に位置しています。「カレー」と言っても、各地域での作り方は様々ですし、そもそも「カレー」が料理の名称ではなくて、ある一定の調理方法をさすこともあります。
冒頭の写真はスリランカの「ライス&カレー」と呼ばれている料理です。バナナの葉の真ん中にご飯をもって、その周りにおかずを盛り付けていきます。お店なら、まずご飯を注文して、あとは好きなものを選んで乗せてもらうというスタイルです。
盛り付けられている1時の位置から時計回りに、チキンカレー、ニンジンのサンボル、じゃがいものカレー、ココナッツのサンボル、マンゴーのカレー、ダールを、そして真ん中にパパダンという薄い塩味のクラッカーのようなものをのせてくれました。サンボルはスパイスで味付けされた副菜。ダールはレンズマメのカレーです。
カレーの決め手は鰹節
スリランカの地元の市場に出かけてみると、なにやら乾物を扱うお店がありました。そこには魚の干物などが並んでいるのですが、木材のように見えるものもあります。
ほかのお店にもありました。この写真の棚の上に並んでいるものが「モルディブ・フィッシュ」と呼ばれるスリランカで一般的に使われている「鰹節」なんです。
日本とスリランカの鰹節の作り方の違い
鰹節もモルディブ・フィッシュも、まず鰹の頭を落として、はらわたを取り、皮を除いてからさくに切り分け、それをゆでた後に燻製にして乾燥させます。日本では乾燥のプロセスで「優良鰹節カビ」が使われることがあります。「枯節」、「本枯れ鰹節」がそうです。
「昔は自然発生のカビを利用していましたが、現在は人為的に純粋培養したカビを使用しています。まずは燻した鰹節の表面を削り、鰹節優良カビ菌を噴霧し、温度・湿度が管理されている室(ムロ)で2週間ほどカビを発育させた後、天日干しをします。これを一番カビと呼びます。この工程を二回、三回と繰り返して二番カビ、三番カビをつけていくことで、やがて悪いカビや細菌が発生しなくなるのです。」
(鰹節について|株式会社にんべん)
優良のカビがつくと、鰹節の臭みが消え、味わいのある出汁が取れるそうです。一方、カビ付けをしていないものは「粗削り」と呼ばれ、こちらは乾燥度が低く魚の風味が強く出るタイプです。
さて、スリランカの鰹節「モルディブ・フィッシュ」のほうはというと、いろいろ調べてみましたが、わざわざカビ付けをするというプロセスがないようでした。そのかわりに、乾燥する鰹節の水分をより少なくするために灰を付けることがあるそうです。
土地によっていろいろな製造法があるとも言われているようなので、もしかしたら鰹節優良カビを付けて作っているものがあるかもしれないですね。上の写真は市場で見つけた鰹の開きの干物です。こんなびっくりするものもあるくらいですから、何があるかわかりません。
旅の案内をしてくれた現地のガイドさんは昔日本にいたことがある方でした。「モルディブ・フィッシュを一本買っていこうかな」と言ったら、「いやいや、日本の鰹節のほうがずっとずっとおいしいからその必要はないよ」と笑っていました。
参考文献・サイト
鰹節について|株式会社にんべん https://shop.ninben.co.jp/blog/?p=388
[All photos by Atsushi Ishiguro]