韓国の釜山といえば、日本からもっとも近い異国の街のひとつ。「旅・写真・ごはん」をテーマに、世界中を旅する「旅行家・写真家・食事家」、石黒アツシさんが綴る今回のコラムは、釜山のローカルな市場が舞台です。少々奇妙な食材ですが、甘辛いコチジャンの香りがぷ〜んと立ち上がってくるようなおいしいお話をどうぞ。
飛行機でひとっ飛び、朝鮮半島の港町
朝鮮半島の南部の港町、釜山は韓国第2の都市です。成田からなら飛行機で2時間30分、福岡からなら船に乗って3時間40分でアクセスできる、国内旅行とさほど変わらない距離感になります。
友人と釜山に出かけたのは、日本ではレバ刺し、牛のレバーを生食することが禁止となってしばらく経ち、久しぶりに食べてみたいと話したことがきっかけでした。調べてみれば、韓国ではレバ刺しを食べるようだし、どうも禁止にはなっていないらしいということで、行ってみようということになりました。気軽に行くなら釜山がいいんじゃないかと、飛行機のチケットを購入、軽い気分で出かけました。
釜山に着いて真っ先に向かったのがジャガルチ市場です。昔ながらの露店もあれば、市場として建てられた新しいビルの中にも店があり、その数に圧倒されます。
港に上がった新鮮な海産や近隣でとれた野菜や肉、韓国料理には欠かせない唐辛子や、様々な総菜をあつかう店、冷麺の麺を積んだ露店なども並びます。
そんな店のひとつに、唐辛子のイラストが描かれた缶、大きさでいえば日本の一斗缶なみの大きさのものが置かれていました。冒頭の写真です。聞いてみれば全部コチュジャンだそうです。
日本でもスーパーなどで手に入るおなじみのコチュジャン。韓国では毎日の生活に欠かせない代表的な調味料です。米粉に唐辛子粉、麦芽、味噌玉麹の粉、塩などを混ぜ合わせて作られる発酵食品です。日本では「甘辛味噌」と呼ばれることもある通り、糖を多く含んで甘く、唐辛子の辛さがしっかりと効いています。
ぶつ切りのヌタウナギをコチジャンの風味で
市場を歩いていると細長い魚を水槽に入れている食堂がいくつも並んでいる狭い通りがありました。簡単な建物が両脇に並び、呼び込みの女性たちが声をかけてくれます。ウナギのように見えますが「ヌタウナギ」という名前で、日本で見かけるウナギとは異なる種で、日本では食べる習慣がないのだとか。これは食べてみようとなり、席に座ることにしました。
まずは、水槽から取り出したヌタウナギをぶつ切りにして炭火で網焼きにします。
それをアルミホイルの上に広げてコンロにのせて、玉ねぎやネギと一緒にコチュジャンで和えながら炒め、えごまの葉にのせていただきます。
ヌタウナギはチュルチュルとした食感ながら、だんだんコリコリとしてきて珍味。甘辛のコチュジャンのおかげで、とっても食べやすくなっています。これをのんびりと食べながら、韓国の焼酎を飲みながら、夜は更けたのでした。
そうでした、レバ刺しもしっかり楽しみました。ごま油と塩で食べるのは日本と一緒で、久しぶりに美味しくいただきました。
食品 : 韓国観光公社公式サイト (visitkorea.or.kr)