「旅・写真・ごはん」をテーマに、世界中を旅する「旅行家・写真家・食事家」、石黒アツシさんが書き綴るコラム。前回のチョコレートに続いて、ニュージーランドの発酵飲料、クラフトビールのお話です。ウェリントンで人気のブルワリー、「ガレージ・プロジェクト」をご紹介します。
やっぱりビール好きの国、ニュージーランド
今回もニュージーランドです。前回のコラムでも書いたように、ニュージーランドには最初に、イギリス(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)やアイルランドから移民がやってきました。現在は、440万人の人口のうちヨーロッパ系が69%、原住民のマオリ系が14.6%、アジア系9.2%、ポリネシア系が6.9%だそうです。
ヨーロッパ系が多いということは、やっぱりビール好きが多いんじゃないかなと想像できますよね。ニュージーランドの首都、ウェリントンでクラフトビールを醸造して売る人気のブルワリー、「ガレージ・プロジェクト」に出かけました。
カラのペットボトルをぶら下げたひとたち
ウェリントンはニュージーランド南島にあるニュージーランドの首都で、北島のオークランドに次ぐニュージーランド第2の都市です。でも、都市の規模としてはそれほど大きくなくて、商業地を離れればすぐに住宅地が広がります。
秋の始まりの夕方に、住宅街の一角にある「ガレージ・プロジェクト」に向かいました。すると、カラのペットボトル、それも、日本ではあまり見かけないような大きなものをかかえたり、フックをかけてぶらぶらさせながら歩いている人たちがいました。それも同じ方向に向かっています。そう、「ガレージ・プロジェクト」にビールを買いに向かっていたんです。
店に着いてみるとビールを買い求める人たちのクルマも出たり入ったり、かなり賑やかな様子です。ここはもともと自動車の修理工場だったそうで、だから「ガレージ・プロジェクト」なんです。
樽から新鮮なビールをペットボトルへ
店内には、こんな風にホースが繋がれたビールのタップが並んでいます。ここからペットボトルに入れるんですね。よく見れば、ビールごとに色がわかるようにディスプレイされています。
あのペットボトルは、ここでビールを詰めてもらって持って帰るという「エコボトル」なんですね。その日に飲む分を買って帰る人が多いそうですから、「気が抜ける」ということは気にする必要はなさそうです。
近くには、同店直営のバーがあってかなりの盛り上がりです。やっぱりビール好きの国からやって来た人たちなんだと実感できます。
この店ではちゃんとグラスについでくれるので、ビールを注ぐためのきちんとしたタップが並んでいます。やはり色がわかるサンプルがディスプレイされていてわかりやすいし、選ぶのも楽しめます。
ビールの色のちがいと発酵
さて、ビールの発酵には「上面発酵」と「下面発酵」の2つがあります。酵母が醸造タンクのなかで上に浮かんで発酵していくのか、そこに沈んで発酵するのかの違いです。(以前チェコのビールの記事でお伝えしましたね)
では、お店に並んでいるビールの種類と色を見てみましょう。
【エール|淡色・中濃色・濃色】
上面発酵です。色が濃ければ濃いほど、ビターになります。最近「IPA」というビールが流行ですが、これは「インディアン・ペール・エール」のことで、イギリスからインドへ輸送する際に痛まないようにホップを大量に使ったもので、配合の仕方によってさまざまなテイストがあります。
【スタウト|黒ビール】
エールの一種です。ギネスが有名ですが、ホップの苦みが強いものです。低発酵性の甘いスタウトというものもあります。
【ラガー|淡色】
ラガーは下面発酵です。ホップが爽やかで、のど越しもすっきり。発酵をコントロールしやすいということで大量生産に向いている製法です。
【ピルスナー|淡色】
ラガーの一種です。なんと日本で流通しているビールの99%がこのタイプ。19世紀中ごろにチェコで生まれた、比較的新しいビールです。
さぁ、これからもっとビールが美味しい季節です。最近は様々な地ビールなども手に入れやすくなっていますから、発酵のプロセスを思いつつ楽しんでください。
(All photos by Atsushi Ishiguro)