「旅・写真・ごはん」をテーマに、世界中を旅する「旅行家・写真家・食事家」、石黒アツシさんが発酵食品を語るコラムです。今回は、お隣の韓国と日本の伝統的なお酒、「マッコリ」と「どぶろく」がテーマ。どちらもお米を原材料に乳酸発酵によって醸すお酒なのです。
エスニックな街、大久保で見つけたマッコリ
フードコーディネーターという仕事柄、東京の大久保には時々買い出しに出かけます。この街にはアジアの食材を扱う店がいくつもあって、日本では手に入りにくいものも売られています。韓国料理店の多い地区ですから、韓国食材のスーパーマーケットもいくつかあります。韓国料理に必要なものなら、材料から調味料や、インスタント食品にスナック菓子、お惣菜や韓国の器と品揃えも豊富です。
ご存じ「マッコリ」は韓国のお酒のひとつ。大久保で買った一般的マッコリと生のマッコリの2種類を飲んでみました。秋田で飲んだどぶろくのことも思い出しました。
2000年以降の韓流ブームと韓国料理
僕がソウルを訪れたのは2008年で、もう13年ほど前でした。2004年ごろに韓国のテレビドラマ「冬のソナタ」が大ブームになり、気軽に行けるお隣の国ということもあって韓国への旅行者も増加。ちょうど同じころに「宮廷女官チャングムの誓い」も放送されました。
「宮廷女官チャングムの誓い」は、主人公が王宮の料理人だったので、韓国の食文化を垣間見ることもできるとても興味深い歴史ドラマでした。上の写真はソウルにある王宮「景福宮」です。この王宮でもロケが行われたそうです。見学に入ると王宮の食卓が再現されている部屋もありました。
マッコリは米を原料としたアルコール発酵飲料
さて、マッコリは米を主原料にしたお酒ですが、アルコール度数は5〜8%ほどでそれほど強くありません。ソウルのマッコリバーには、もも、バナナ、マスカットといった、若い人たちがカジュアルに楽しめるようなフレーバーも並んでいました。
上の写真の、右は加熱処理をしたもの、左が加熱処理をしていないいわゆる「生マッコリ」です。いずれもプレーンなタイプでフルーツなどの味がついていない昔からあるタイプです。
どちらも乳酸発酵による甘みと酸味があり微発泡しています。色合いはほとんど変わりませんが、生マッコリのほうはよりしっかりと旨味があるように感じました。ただ加熱処理をしておらず、酵母の働きを止めずに出荷されていますから、その分賞味期限は短く、要冷蔵で1週間から1か月程度です。一方の加熱処理したほうを飲んでみると、生のものよりもすっきりとした印象で、飲みやすい口当たりでした。
チヂミを焼いて、唐揚げに甘辛のソースを絡めたニョンニャムチキンも用意しました。やっぱりその国のお酒にはその国の食べ物が合いますね。
どぶろくとの違いは?
さて、マッコリを楽しみながら思い出したのは日本の「どぶろく」です。どぶろくも米が原材料ですし、微発泡するものもあります。乳酸による甘みも酸味もあるので、マッコリに似ています。ただ、どぶろくのほうが濃厚な口当たりで、アルコール度数は14〜17度と日本酒と同じくらいあるので飲みすぎには注意が必要ですね。
上の写真は秋田県北秋田市の阿仁マタギ特区で作られているもの。秋田の米の旨味と乳酸発酵による深い味わいに、しっかりしたアルコール度数で、ゆっくりと楽しむお酒でした。
アルコール度数が低く、微炭酸ののど越しもいいマッコリは、夏には農作業の間にも飲まれていたそうです。これから春、夏を迎えますから、冷蔵庫で冷やしたマッコリを楽しむのにはいい季節になります。
[All photos by Atsushi Ishiguro]
あせて読みたい韓国発酵コラム
釜山の市場で食べるヌタウナギとコチュジャン