ブルガリアというと、すぐにヨーグルトが思い浮かびます。けれども、ほかにも伝統的な発酵食品がたくさんありそう。「旅・写真・ごはん」をテーマに、世界中を旅する「旅行家・写真家・食事家」、石黒アツシさんが書き綴るコラム。今回は、ブルガリアのローカルなペイストリーショップで出会った麦芽発酵飲料のお話です。
ブルガリアの首都、ソフィアを歩いて
ブルガリアの首都ソフィアは、バルカン半島の中心に位置することもあって、歴史上重要な都市でした。人口は1500万人ほどでそれほど大きな街ではなく、市内の見どころならどこでも歩いて行ける距離です。冒頭の写真は街のシンボル聖ソフィア像です。1989年まではレーニン像が置かれていた場所に作られたそうです。
また、東方正教会の巨大なキリスト教の大聖堂、オスマントルコによる支配の時代から続くモスク、ユダヤ教のシナゴーグがすぐそばに建っています。多様な生活スタイルを持つ人々が、この小さな盆地の街に住んできたのだと実感できます。
さて、今回注目したのは、ブルガリアの人たちの毎日の生活に欠かせない「発酵麦芽飲料」です。
名前のないペイストリーショップへ
朝早く、「ソフィアの人たちならではの朝食の楽しみ方を体験できるよ」と地元の若い女性のガイドさんと、名前のないペイストリーショップに出かけました。目印は白い壁に青い格子です。
通りの角に立っているので中は明るく、母親と子供、ご夫婦などのお客さんが入っていて、のんびりとした雰囲気でした。奥の角にカウンターがあって、ここでお目当てのペイストリー「パニッツァ」を買います。
売っているのは、ほうれん草のものとチーズのものの2種類。量り売りなので、手で大きさを示して切ってもらいました。
パニッツアは、「フィロ」というトルコ発祥の薄い生地を重ねて作ります。オスマントルコ時代に伝わったものだと言われています。ブルガリアはその南側で、トルコと国境を接しているんですね。
こんがりと香ばしく焼かれた表面に、内側はしっとりとして、シンプルに味付けられた具が美味しくいただけます。
一緒に乳飲料と発酵麦芽飲料「ボザ」を
飲み物はブルガリアならではものを2つオーダーしました。1つはやっぱりブルガリアですから、アイリャンというヨーグルトドリンク。そしてもう1つが「ボザ」という発酵麦芽飲料です。
ボザは麦芽を発酵させてつくる飲料だそうで、ブルガリアの子供なら小さい時から飲んでいるそう。麦芽を発酵させると聞けばビールが思い浮かびますが、このボザにも1%ほどのアルコールが含まれているそうです。
味は、香ばしい麦芽の香りがしてすっきりとした甘みがあります。トロっとしているところは、ツブツブはありませんが、甘酒に似ています。
ビタミンも豊富ですが、発酵して発生する乳酸菌が腸内フローラの形成にいいそうです。また、ガイドの女性が、「実はボザを飲むと、女性の胸が大きくなると言われています」と教えてくれました。母乳が出やすくなる効果があるので、そう言われるそうです。
(All photos by Atsushi Ishiguro)