春は、中医学的には「陰」から「陽」へと移り変わる時期。木々が芽吹くように、からだの中の気も上り、さまざまな変化が生まれます。ホリスティック・ウェルネス・アドバイザーである星宏美さんの今回のお話は、春に気を配りたい、からだと心の整え方。気持ちのよい季節だからといって油断せずに、ぜひ耳を傾けてくださいね。
春は陰から陽が徐々に強くなる季節
3月5日は二十四節気の「啓蟄」(けいちつ)、そして20日は「春分」です。
啓蟄は、冬ごもりしていた虫たちが、地上に顔を出してくる頃であり、生き物が活動を始める時期になってきたことを示します。
中医学では、寒くて夜が長い冬は「陰」の季節。それが春になると、徐々に温かくなってきて、春分を境に昼が長くなり、「陽」の気が次第に増えていきます。
このように、中医学でも陰陽説が大きく関わります。
夜や暗は陰、昼間や明は陽と考えられ、この二つのバランスを保って生活することが大切になります。
季節が移り変わる時期は、体も大きく変化を感じます。
陰の冬は、からだを活発に動かすというよりも、春に向けて溜めていく時期。一方、春は、その溜めていたものを上手に使うと同時に、余分に溜めこんでいたものを外に出すデトックスが必要な時期です。
新しいことが始まる春
中医学の基本となる考え方の五行説では、自然界のものを【木】【火】【土】【金】【水】の5つのグループに分けています。
四季もこの五行説のグループによって分けられ、春は【木】に属します。この【木】は、木々が芽吹き、上に伸びてくる様を表します。
植物は上に芽を伸ばしていきます。それと同じように、人はからだの中にある気を上に昇らせます。それが春という季節になります。
春は気が上がりやすくなる
では、気が上がると、人にはどんなことが起こってくるのでしょうか? からだの変化でいうと、のぼせ・片頭痛など頭部に関わるトラブルが多くなってきます。花粉症によって鼻水やくしゃみ、頭痛や頭のモヤモヤなどが起こりやすくなるのも同じです。
そして春は入学や引っ越しなど新しいことが始まる季節です。慣れるまでは、いろいろとストレスを感じることも多いと思います。イライラを感じやすくなったり、不安などで気持ちが下がり情緒が不安定になったり、このような状態に陥りやすいのも春の気の流れが関係すると考えられています。
頭痛がしたり、イライラしたり、からだや心に変化を感じたとき、「からだが春を感じているんだな」と思うようにすると、いつもの不調も多少は楽になるかもしれません。
体の不調をとりのぞくための手軽なストレッチ
このように春に起こりがちなからだや心の不調を整えるために、気の流れをスムースにするストレッチをご紹介します。
●体をねじる
春は、冬に溜めこんでいたものをデトックスする時期です。そのためにはねじる動きが有効です。ねじることでからだが絞られデトックスにつながります。お腹からしっかりとねじってみましょう。
また、お腹をねじると腸が刺激され、【木】にもよい影響を及ぼすといわれています。
●体の横側を気持ちよく伸ばす
春と同じ【木】のグループに属する臓腑は、肝胆です。この肝胆に関わる気の流れは、からだの体側部や頭を通っています。
ですから、からだの横を刺激するように体側を伸ばす動きが効果的です。椅子に座っている時などでも、頭の上で手を組んでぐっと伸びをすることで体側をストレッチできます。気持ちよく呼吸をしながら伸びをしてみましょう。
●頭をほぐす
頭にも、春の気に関係する気の流れ【胆経】があります。頭皮を動かすようにマッサージをすることもおススメです。たとえば、シャンプー時の頭皮マッサージ。春は意識的に頭をマッサージして気を整えましょう。
陰から陽に変わる春は、からだや心のバランスが崩れがちになる時期です。手軽に行えるストレッチなどを上手に取り入れて、まずからだのバランスを整えるように気を配ることをおすすめします。
ひとつのバランスが整うことで、他の気の流れにもつながり、健康的な状態に近づいていくと思います。自分に合った方法で、心地よく毎日を過ごしていきましょう。