ライ麦パンというとドイツが有名ですが、じつは寒冷な国々ではとてもポピュラーなパンなのですね。「旅・写真・ごはん」をテーマに、世界中を旅する「旅行家・写真家・食事家」、石黒アツシさんの今回のコラムは、北欧の国々の街角で出会ったさまざまなライ麦パンのお話です。
ライ麦パンの酸味は乳酸菌発酵がひと役
北欧4カ国は、ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマークです。そのうちのノルウェー、スウェーデン、フィンランドの3カ国が共同で運行するスカンジナビア航空で北欧の旅に出かけました。
成田からまずはデンマークのコペンハーゲンに向かう機内で提供されたスナックは、サンドウィッチとコーヒーです。トマト、キュウリ、チーズとレタスが、茶色を帯びたパンに挟まれているというシンプルなサンドウィッチ。ちょっと酸味を感じるパンに、フレッシュな食材がよく合います。ライ麦パンです。ライ麦は小麦が育たない寒冷地でも栽培できるので、北欧などの寒い地域でパンを作るのに使われます。
ライ麦パンのバリエーションはライ麦含有量
ノルウェーの首都、オスロのホテルの朝食はブッフェ形式でした。北欧と言えばサーモンですが、パンはやっぱりライ麦パンです。
ライ麦にはグルテンが含まれないので、それだけではふっくらと膨らみません。そこでふっくらさせるために小麦粉と合わせて焼きます。もちろんライ麦だけで作る、全く膨らんでいないものもありますし、ライ麦と小麦粉と比率が異なるものがいくつもあるので、「ライ麦パン」といって様々な食感です。
このホテルのものはしっかりとライ麦の香りがしていながらも、一般的な食パンに近いふくらみがあって、馴染みのある食感でした。
ライ麦100%のふくらみのないパン
フィンランドの首都、ヘルシンキの港に古くからあるフィッシュ・マーケット「ビャンハ・カウッパハッリ」では、新鮮なシーフードばかりでなく調理された総菜なども手に入ります。その一角にあったのが北欧でポピュラーなオープン・サンドです。
小さなザリガニをマヨネーズに合わせた具や、たっぷりのスモークサーモンを乗せてディルを飾ったものなどがショーケースに並びます。
オープン・サンドですから、パンの上に乗っているのですがこちらもライ麦パン。しかもライ麦が100%のふくらみがないものでした。
しっかりとした食感と、一層感じることができるライ麦の香ばしさ。薄くてボリュームがなさそうですが、食べてみれば満足感があります。
ノルウェーのオスロ郊外のカフェではザリガニのサンドウィッチを食べました。こちらは小麦粉が含まれて少しふっくらしているタイプのライ麦パンです。軽くて食べやすい食感です。
ミートボールやビーフ・タルタルも
スェーデンのストックホルムの写真美術館「フォトグラフィスカ」で写真を鑑賞した後、中のカフェに入りました。北欧と言えばミートボールも有名ですが、小さなものをたくさん乗せたオープンサンドがありました。
こちらももちろんライブレッド。薄いタイプです。ライ麦パンのいいところって、もしかしたらよく噛むことかもしれません。ちゃんと噛んで具も一緒に食べると、おいしさをしっかり感じながら食べることができますよね。
ちなみに、ライ麦100%で膨らまないのですが、もちろん発酵のプロセスが必要です。ライ麦40%以上になると使うのは「サワー・ドウ」と呼ばれるパン種。この「サワー・ドウ」には、乳酸菌や酵母などたくさんの微生物が含まれています。ドライイーストで簡単に作ることはできないんですね。
こちらはオスロのバーで食べたビーフ・タルタルのオープン・サンドです。こちらもライ麦100%。あっちこっちでライ麦パンを食べているうちにすっかり慣れて、日本に帰って白い食パンをたべると何か物足りなく感じるほどでしたが、同時にふっくらしたパンのおいしさも再認識させられました。
[All photos by Atsushi Ishiguro]