「旅・写真・ごはん」をテーマに、世界中を旅する「旅行家・写真家・食事家」、石黒アツシさんが発酵食品を語るコラム。今回は久しぶりの海外編です。夏でも爽やかな風が吹くアイルランド・ダブリンでギネスビールを満喫。さて、あの濃厚な色合いの秘密はいかに?
ダブリンでギネスを満喫
ビールと聞けば、暑い夏にグイっといただく場面が浮かびますよね。夕方になって、蒸し暑かった一日を締めくくるために、キリリと冷えたビールを一杯。でも、冬だって温かい鍋にハフハフ言いつつ、またまたキリリと冷えたビールを飲んでいます。四季がはっきりした日本では、季節ごとの楽しみ方で、一年を通してよく飲まれています。
6月の後半、アイルランドのダブリンに出かけました。ダブリンと言えば黒ビールの「ギネス」の生まれ故郷。今では世界中で愛されるブランドです。
夏でもかなり涼しいアイルランド
ダブリンに着いて街に出てみると、古くからの建物が多く、石造りの教会も点在していて歴史的な趣が感じられる街並みでした。夏は観光の季節。アメリカからの観光客が多かったのは、距離が比較的近いということもあるかもしれませんが、アイルランドから新大陸に渡った祖先たちのルーツの土地だからかもしれません。
朝夕には雨が降り気温が低く10度程度で、日中は晴れても最高気温は20度程度と、夏でもかなり涼しい気候です。レインコートを着ている人も多く、中にはダウンを着ている人もいてびっくりしました。上の写真はダブリン城です。時計台が青空を背にしてすっと建っていました。朝夕の雨が町を洗ってくれているようで、とてもすがすがしい街です。
さて、ダブリンで必ず訪れるべき観光地の一つがトリニティ・カレッジの図書館。「ロングホール」と呼ばれる一番古い建物は、その名の通り奥行きが深い建物で、高い天井まで届く本棚と、この図書館をサポートしてきた偉人たちの胸像が並んでいました。
ギネスの工場で飲むギネスビール
創業当時からダブリンの市街地に建つギネスの工場。その広大な敷地の一角に、「ギネス ストアハウス」という名の博物館があります。7階建てのビルにはギネスビールの醸造法にまつわる情報が視覚的にまとめられています。その最上階で、ギネスの工場を見下ろしながらいただく一杯のギネスビールは最高の味でした。
ギネスビールの原料は、水、大麦、焙煎したモルト、そしてそこに伝わるイースト(酵母)です。そのレシピもイーストも門外不出で、その美味しさの伝統を守り続けています。黒ビールが黒いのはモルトをしっかりと焦げるまで焙煎するから。あのスモーキーなちょっと香ばしい味わいも、焙煎の結果だったんですね。
牛肉のギネスビール煮込みのこく深さ
ダブリンの繁華街のレストランに入って、アイルランドの伝統料理である牛肉のギネス煮込みをいただきました。牛肉がギネスの力を借りて柔らかく煮込まれています。少し苦みを感じるギネスビールの味わいが、そのこく深さの秘密でした。
ギネスビールを飲んでギネスを使った煮込みを食べてと、ギネスを満喫したダブリンの旅でした。
[All photos by Atsushi Ishiguro]