2021年3月20日春分の日に、KOSMOST主催の初オンライン・ワークショップが午前と午後に行われました。テーマは「味噌づくり」。副編集長“はっこうちゃん。”がナビゲーターとなって、こどもから大人まで男女約20名が参加し、三角巾にエプロン姿の参加者が画面上で勢ぞろいしました。
「発酵場」はオンラインでも醸成できるか?
“はっこうちゃん。”が今まで続けてきた味噌づくりワークショップの定番といえば、参加者がある場所に集まり、同じ材料、同じ空間で各々の味噌を仕込むスタイルでした。出来上がった味噌を持ち帰り、おうちのどこかで熟成させ、秋の食べ頃を迎える流れです。
「手前味噌をつくってみたい!」という気持ちに溢れた人の集まる場は、ポジティブなエネルギーに溢れていて、発酵にかかわる微生物もたくさんいる「発酵場」となります。そこから生まれる対話や思いも、味噌づくりの大切な材料として、味噌に盛り込まれていきます。
しかし、今回はオンラインでの開催です。コロナ禍という未曾有の社会状況のなかで、1か所に集まっての従来型ワークショップ開催は不可能でしたが、何とか味噌づくりの楽しさを共有したいと、オンラインで実施しました。
当日は、想像以上に、画面上から楽しいエネルギーが伝わってきました。三角巾とエプロンというコスチュームのおかげもあってか、視覚による仲間意識が開始数秒で芽生えているようでした。それが相乗効果となって、オンラインでも「発酵場」が醸成できる可能性を感じた瞬間でもありました。繰り広げられるダイアログを媒介として、それぞれの台所が「発酵場」となっていたのです。
時間をかけて大豆をもどし、ゆでることで、味噌づくりが自分事に。
今回は、材料として乾燥した国産在来種・無農薬大豆を各参加者へ事前にお届けしました。従来のオフライン・スタイルでは、全員分のゆで大豆を企画側が用意していましたが、今回はワークショップ直前に大豆をゆでる作業を、参加者自身が行いました。
前日から大豆を浸水し、当日2-3時間かけて大豆をゆでる行程はハードルが高いかなと思っていましたが、不安をよそに、全員が完璧に美味しいそうなゆで大豆を準備してワークショップに臨みました。
「大豆を茹でている時にすごくいい匂いがして、幸せでしたー」
「前から大豆を茹でてみたいと思ったので機会が出来て嬉しい」
「いい大豆はゆでてもつぶれないことがわかりました」
「無農薬大豆を使うとゆで汁がこんなにおいしいなんて!」
とのコメントもありました。こうして、事前に大豆を茹でる作業を参加者自身が行うことで、当事者意識がさらに高まることを感じました。手間をかけることで手前味噌への愛着も湧いてきます。
味噌について座学で学んだのちに、いよいよ味噌づくりを開始。ゆでた大豆をつぶして、塩と米麹を混ぜ入れて、容器に入れて仕込みは終了。味噌仕込みに要した時間は約45分ほどでした。こんなふうに、味噌仕込みのプロセスは実にシンプルです。初心者でもオンラインで一緒に仕込むことができました。味噌はそれぐらい手軽にできる自家製発酵調味料なのです。
“はっこうちゃん。”の味噌づくりワークショップで大切にしていることのひとつは、仕込んだ味噌に名前を考えることです。自分の想いを名前に込めて、手間をかけて発酵させていくことで、暮らしがさらに豊かになると考えるからです。一人ひとりが紡ぐ味噌のものがたりが、名前を付けることからはじまります。ワークショップの最後には、それぞれ異なるネーミングをして、味噌にしっかりフタをしました。
秋まで楽しむ味噌づくりのコミュニティ
春分の日に 味噌を仕込んでから1か月後、オンライン・コミュニティを通して、参加者それぞれが味噌の熟成度合を共有してみました。
同じ日に、同じ材料、同じ配分で仕込んだ味噌ですが、それぞれ手前味噌の発酵度合は十人十色。仕込んでたった1か月後でも、相当個体差が出ていることがわかりました。一同に介して仕込む味噌よりも、それぞれの場所にいた多様な微生物が媒介となって、さらに個性が引き立つ手前味噌仕込みができた結果だと思います。状況が落ち着けば、オフライン・コミュニティにつながるかもしれません。
味噌の食べごろは今年の秋です。これからどんな手前味噌が仕上がっていくか楽しみです。引き続き、KOSMOST味噌づくりワークショップ参加者でのダイアログを続けていきます。またKOSMOSTでもレポートしますので、ワークショップに参加されなかった方も味噌の発酵具合をご一緒にお楽しみください。