ホリスティック・ウェルネス・アドバイザー、星宏美さんのコラムです。以前に、暑い夏に起こりやすい中医学的な不調として「気虚」(ききょ)のお話がありました。そこで今回は、同じく「血虚」(けつきょ)について話を聞いてみました。この「血虚」も、やはり夏に気を配りたい不調なのだそうです。
血が足りなく「血虚」とはどんな症状?
前回、中医学の「気虚」(ききょ)についてお話しました。この気虚とは「気」が足りない状態のことでした。
そこで今回は、同じように「血」が足りなくなる「血虚」(けつきょ)についてご紹介したいと思います。
血は、私たちの体にとって栄養を巡らせるという重要な役割を担っています。つまり、血が足りない状態とは、体中に栄養が行きわたらない状態ともいえます。そしてこの血虚は、夏によく起こりがちなのです。
血虚の原因は、血が冷えてしまうことといわれています。本来は冬に起こりやすいのですが、夏になると日常的にクーラーを使う最近では、血虚は冬のものだけではなくなりました。クーラーばかりでなく、暑くてついつい冷たいものを食べがちになったり、体を冷やし過ぎてしまったりするのが、現代の夏です。私の友人に鍼灸師がいますが、夏に来る患者さんは冷えからくる体の不調が多いという話でした。
血虚になると、さらに冷えを感じやすくなり、疲労感が増したり夏バテになったりしてしまいます。
夏は「心」にかかわる経路の巡りが滞る
中医学では、血と関係の深い臓器として、心、脾、肝などあげられています。心は、血を送りだす心臓にも関係し、血虚になると負担がかかりやすく、動悸にもつながります。また、中医学では、体に通る気の流れに関わる「経路」という考え方があり、夏は心に関わりのある経路の巡りが滞るといわれています。
脾は、気血水を生み出す工場ともいえる臓器であり、その働きが悪くなると血も生み出せなくなってしまいます。夏バテになると食も進まなくなり、血虚を増大させてしまうこともあります。
肝には、体の血を調整してくれる働きがあります。肝の力が弱くなると血の調整がうまくいかなくなります。その結果、くらくらしたりフラフラしたりをまねくことがあります。
冷え性を防ぐ中医学的な食材
中医学では、血を補う食材として次のようなものがあげられています。
黒豆、アーモンド、黒ゴマ、黒きくらげ、ホウレン草、レタス、人参、干しぶどう、ライチ、桃、鮭、カツオ、マグロ、牡蠣、牛豚鶏のレバー、卵、オイスターソースなど。
また、薬膳や中医学らしい食材では、金針菜(きんしんさい)、竜眼や桑の実(マルベリー)なども補血効果が高いといわれているので、試してみるのもよいかもしれません。金針菜は百合のつぼみの部分で、とても補血効果が強いそうです。
もちろん、食べものに気をつかうことは大切ですが、血虚を防ぐためには日頃から体を冷やさないように気を配ることがポイントになります。夏を健やかに乗り切るためにも、できるところから一つひとつ気をつけてみましょう。